腕時計は価格と価値が必ずしも比例しない「モノ」であると、個人的には思っています。
搭載された機能や見た目以外の評価基準が多数あり、そこに「納得できるか否か」が最も重要な点です。そしてその非常に個人的な嗜好に委ねられた部分こそ、高級時計の「価格」をかさ増ししている要素なのです。
「かさ増しされた価値」に感動なんて生まれない
それは「美術品に然り」といったところでしょうか。
例えば100円均一で売られている器に「バンクシー」が一筆入れれば、それは莫大な価値を持つ現代美術に生まれ変わります。腕時計においても、エボーシュのムーブメントに少し手を入れただけの「疑似オリジナル」を搭載することで、価格の土台を大きく上増しする風潮がある。
反面、凡百のエボーシュを徹底的に見直してその性能を限界まで引き出すという、ある意味オリジナルムーブを作ることより難しい工程を施すことに価値を見出したメーカーもあります。私自身はそれほどムーブメントに拘る人間ではありませんが、多くの腕時計愛好家が「ETAポン」を忌避する気持ち自体は解らないではありません。3、40万円を超える価格の時計については、中身にも「良い仕事」を求めたいものです。
つまり、同じ価格帯に属する時計であっても、「価値の構成要素」はまるで違うということです。「本物の拘りと本物の仕事」で万人を納得させる時計が存在する一方で、「宣伝の成果」として〝これだけの価値があります〟と謳う時計もある。
どちらが愛される存在であるかは自明です。かさ増しされた価値に「感動は生まれない」のです。
時計の楽しさは「高級」とは別次元に存在する
極稀にですが、僅か数万円で売られている時計の中に、「これは!」と目を引く時計があります。この辺りの価格帯だと、モノに対する見方も緩くなって、なにか単純に「刺激」を求める方向に向かってしまいがちですが、「楽しさ」という、趣味の時計における一番の「感動」を味あわせてくれるのも、この辺り「数万円の時計」だったりします。
因みに私がここ数日、ポチろうかどうしようか迷っているのがコチラ…
FUTURE FUNK(FF104-YG-RB)

「FUTURE FUNK」の「FF104」。アメリカンレトロフューチャーなデザインがたまらないシリースです。
70年代に「JAZ社」が作ったローラー型デジタル時計をヒントに作られたこの時計、キリキリと数字が動く様は、まるでスパイ映画の金庫破りのシーンを見るようです。めっちゃオモロイ ヽ(゚∀゚)ノ
この絶妙なダサさ、外し感。お洒落すぎないスタンスで装着者の年齢も問わないんじゃないでしょうか。スーツにも合いそう!
カラーバリエーションは「イエローゴールド」「シルバー」「ブラック」の3種類。私的には「イエローゴールド」が一番気になります。価格は「1万6280円」です。
価格から言っても所謂「高級感」は感じませんが、ノスタルジアとは元来そういうもの。FUTURE FUNK は突飛なセンスで「面白い時計」を作ることに特化しているように見えて、時代感のように表現しづらい繊細な部分にも注目すべき才能を発揮しています。
| 「FF104」(Ref.FF104-YG-RB) | |
|---|---|
| ケースサイズ | 44mm✕42mm |
| 防水性能 | 3気圧 |
| ムーブメント | クオーツ |
| 価格 | 1万6280円 |
| 公式サイト | https://futurefunk-watch.com/ |
こりゃ意外!! 日本のメーカーさんだった
ちなみに「FUTURE FUNK」さんは日本のブランドです。何だか意外ですよね。Schottのレザーで決めたくなるレトロアメリカンなデザインに、アメリカの新興ブランドか何かだと勘違いしていました。とはいえ間違いなく、「アメ車とダブルのライダース」が似合うでしょう。
「FUTURE FUNK」さんには、他にも安くて面白い時計が沢山あるんですよ~ (*´ω`*)
FF105-OL

プラ外装を纏った軽快なモデル。世界の主要都市がプリントされた「インナーリング」が、一層レトロな雰囲気を醸し出しています。取り敢えずFUTURE FUNKの世界を楽しみたい方にはうってつけかもしれませんね。
クオーツムーブメント、ケース幅46ミリ、3気圧防水、風防はミネラルガラスです。
KF301-SV-BK

これ好きです!! 個人的には「アレ」よりも好き(詳細は差し控えます)
ムーブメントは中国の電子部品メーカーが作ったものだそうですが、やはりレトログラードは良いですね。針の配置とその意味するところが大幅に変わるため、時計趣味にどっぷり使っている方ほど興味が湧くのではないかと思います。
ゼロポジションへのフライバックを繰り返すレトログラードの針。あの面白さを「1万9800円」で味わえるのです。
クオーツムーブメント、ケース幅43ミリ、3気圧防水、風防はミネラルガラスです。
FUTURE FUNK さんには『低価格変態時計』を極めて欲しい
今回、追記のために調べ直してみたら、本記事を書いた頃に比べプロダクトが大幅に充実していました。ブランドの成長を確認できて嬉しく思いました。
一本目の腕時計として購入する時計ではないかもしれません。4本目くらいに「捻った時計が欲しいなぁ」となって購入を検討する時計かもしれません。
実際、4本目の検討対象としての戦闘力はかなりのものだと思います。他に比べるものが見当たらないからです。際どい個性は「欲しいか欲しくないか」で足切りされる可能性を高くしますが、際どいからこそ「ハマるときは深くハマる」… 中国製の変態機構で生み出される「個性のカタマリ」が、今後どのような評価を受けるのか… すでにサブカル時計としては一定の知名度を持つFUTURE FUNK さんの「低価格変態時計メーカー」としての成長に期待しています (*´∀`*)









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