『Baltic』フランスの洒脱が詰まった〝ネオ・クラシック〟

「Pequignet(ペキニエ)」を知らない貴方は、少し〝損〟をしているかもしれない

 ずっと不思議に思っていることですが… 購入してすぐにレビュー記事を書ける時計もあれば、気に入って使っているのに、中々評価が纏まらない(下せない)時計もあるのですよ。解釈が難しい時計ではありません。どういうわけだか文脈が落ち着いてくれないのです。

 対象の時計によって理由はそれぞれあります。例えば、アチコチで散々に語り尽くされた時計のレビュー記事は「独自性」が出しづらいため一向に筆が乗りません。ですので、そういう時計は購入から「3年経過報告」など、私だけのストーリーが生まれるまでは寝かせておくことにしています。

Table of Contents

ふしぎなペキニエ

 ペキニエの「ROYALE Manuelle(ロワイヤル マニュアル)」を購入した経緯については、折りに触れ何度か書かせていただいた記憶があります。購入動機は思いつきでも何でもなく、結構長い間「買うならコレ!!」と明確に狙っていたモデルでした。

 とにかくロワイヤル マニュアルの「顔が好き」でした。スモールセコンドの3針なんて珍しくもありませんが、これだけ「強さを前に出した3針」には中々お目に掛かれません。42ミリという大きめのケースも、これだけ強い顔の輪郭として十分な説得力があると思いました。

 後述しますが、ペキニエ独自のマニュファクチュールムーブメントも画期的過ぎる逸品です。それなのに目玉が飛び出るような価格ではありません。

 「デザインが好き」「存在感が好き」「ムーブメントが面白い」「価格もそれほど高くない」… 実際にこれだけの、まるで〝満足のミルフィーユ〟の如き優れた長所を持つ「ロワイヤル マニュアル」なのですが… 不思議ですよねぇ… 書けないのですよ。書こうと試みるたび〝下手に書いて誤解されたくない〟という恐れが前に立ちふさがって、筆が止まるのです。

ペキニエは〝隠れ家的ブランド〟なのだろうか??

 ペキニエさんは過剰なラグジュアリー路線を走るブランドではありません。フレンチマニュファクチュールという看板の華やかさから華美を連想する方が多いかもしれませんが、実際はしっかりと地に足をつけた、ユーザー目線の時計を作っているブランドです。

 自社ムーブメントを搭載した時計としてはかなり良心的な価格設定です。時計自体の価値判断基準として述べられることが多い3要素「デザイン」「素材」「ムーブメント」でいえば、正直「掘り出し物しか見当たらない」… 昨今、珍しい時計ブランドだと思います。

 ですので、本当なら多くの人に「ペキニエ良いよ!!」とモリモリ発信すべきなのですが… その熱量と同じくらいの大きさで〝隠しておきたい気持ちがあります。心のどこかで「いつまでも知る人ぞ知るペキニエであってくれ!!」と念じているのかもしれません。ね、その辺、小さい男なんですよ(笑)

 時計に興味を持った方がスッと辿り着けるブランドではないかもしれませんし、ある種の〝偶然〟が必要なペキニエさんかもしれません。だからこそ、幸運にもペキニエさんに辿り着けた私の中で「オレだけの聖域」みたいな心境が芽生えたのでしょう。

 とはいえ、神田の横道で隠れ家的名店を見つけたら「次は友人を連れてこよう!!」と考えるのが自然ですし〝幸福の青い鳥〟は私だけのものではありません。というわけで今回、満を持して皆さまを「目眩くペキニエの世界」にご招待申し上げます。

〝メイド・イン・フランス復権〟を背負って

フランスとスイスはお隣さん

 多くのジャンルで最高峰の価値を有する「Fabriqué en France(Made in France)」ですが、現状、欧州の時計業界における〝フランス製〟は、スイスやドイツの後塵を拝していると言わざるを得ません。

 時計産業に従事するフランス人が少ないわけではないでしょう。実際、フランスで学んだ時計技術者の多くが、国境を越えてスイスに職を求めていると聞いたことがあります。フランスで技術を身に付けて、スイスの名だたるブランドでその手腕を発揮しているわけです。

 その理由として、フランスとスイス両国の給与の差が影響していることは明らかです。ちなみに2024年前後で両国の平均給与を比較してみると、年収でフランスが「約 €44,968(約822万円)」、スイスが「約 €104,000(約1900万円)」… 倍以上の大差が付いています。場所によっては車で通勤可能な場合もありますし、それなら誰だってお給料の良いスイスで働こうと思うはずです。

 生活費の安いフランスで暮らし、高給のスイスで稼ぐ… 実際、そんなスタイルも珍しくないと聞きました。スイス時計産業の中心地であるラ・ショー=ド=フォンもル・ロックルも、フランス国境まで10キロあるかないかの距離に位置していますからね。

 優秀な人材が国外に流出する事情の多くが「経済的理由」であることは間違いありません。ただ、それ以前の問題としてフランス側に彼らを働かせるだけの「受け皿」がないことの方が問題としては深刻。

 「ペキニエ」さんが目指すものは、まさにその問題の解消です。フレンチブランドが手を取り合って高みを目指しフランス製時計の価値やイメージを高める。そうすればスイスに負けない待遇が可能になって、優秀な労働者を呼び戻すことにも繋がるでしょう。

 次の段では私が愛用するペキニエ「ロワイヤル マニュアル」を通して、何かと伝わりにくいペキニエさんの魅力に迫りたいと思います。

スイスとは違う、フランスならではのエレガントが生んだ「ROYALE Origine Manuelle(ロワイヤル オリジン マニュアル)」

Pequignet ROYALE Origine Manuelle ペキニエ ロワイヤル アニュアル 平置き シルバーサンバースト ダイヤル  ジャン・ルソー
ロワイヤル・マニュアル 9080413-CA ストラップはジャン・ルソー製

 「ロワイヤル マニュアル 購入」から随分と時間が経ちました。その間、ストラップ交換による隠れた魅力の掘り起こしなども積極的に行ってきましたが、それでも未だに「これがペキニエだ!!」と全てに納得したわけではありません。私自身、未だ見出せていない何か… 奥底にたゆたう〝魔性〟を感じているからです。

 実際、何気ないデザインの時計が多い「ペキニエ」さん。ガツンとくるスイスやドイツの時計たちに比べると確たる主張を感じない。ある意味、ケセラセラなラインナップだと思います。

 ですがこれだけは言えます。「だからこそ差別化できているのだ」と。これこそが〝フランスの粋〟なのです。自分の人生を自分の美意識で味わい尽くす、まさに〝アール・ド・ヴィーヴル〟の神髄。

Pequignet ROYALE Origine Manuelle ペキニエ ロワイヤル アニュアル 平置き シルバーサンバースト ダイヤル  ジャン・ルソー
ロワイヤル・マニュアル 9080413-CA

 2017年のキャリバー・ロワイヤル、ロワイヤル・マニュアル、2021年のキャリバー イニシャルで自社製ムーブメントを揃え「完全なるフランス製とは何か??」を問い続ける姿勢… その険しい道のりですら大事に見せないところが、これまたエレガントなペキニエさんです。

「自社製ムーブメント」で差別化を図るペキニエ

出典:https://japan.pequignet.com/

 「ムーブメントが面白いから買った」… 外観デザイン至上主義の私にしても、稀にそんな気分になって購入する場合があります。ちなみに、仕上げが凄まじいとか、そういう工芸的、手技的な力加減はデザイン性の底上げにほとんど寄与しません。「面白いデザインのムーブメント」とは、構造の面白さが表面から見て取れるような『右脳と左脳を交互に刺激するムーブメント』のことを指します。

Calibre ROYAL(EPM02)

Pequignet ROYALE Origine Manuelle ペキニエ ロワイヤル アニュアル 平置き シルバーサンバースト ダイヤル  ジャン・ルソー Calibre Royal Manuel キャリバー ロワイヤル マニュアル センター シャフト ドライブ
ロワイヤル・マニュアル 9080413-CA Calibre Royal Manuel

 「ロワイヤル マニュアル」が搭載するのは、ペキニエさんの完全自社製手巻きムーブメント『Calibre ROYAL(EPM02)』です。初めて写真で(インスタだったかな??)この裏透けを見たとき、まるで雷に打たれたかのような衝撃がありました。

 「な… なんじゃこりゃ!!」… 刑事ドラマ『太陽にほえろ!』の名シーンが頭の中を駆け巡りました。見た目がおかしい!! この〝芒に月(花札)〟みたいなレイアウトは一体何だ!?

 「センター・シャフト・ドライブ」と名付けられた大きな円柱は、その見た目の面白さもさることながら、ゼンマイの動力を余すところ無く伝達するためのガチな装置でした。減衰を抑えて達成したパワーリザーブは「約100時間」。振動数は21,600振動/時。

 極端なロービート化で伸ばしたパワーリザーブにも、香箱を2つ載せて実現したパワーリザーブにもそれほど驚かないワタクシでさえ、この「脳筋的発想」にはやられました。ジョーンズキャリバーのポルトギーゼと同じく、ムーブメントのインパクトで買った(買わされた)時計です。

「センター・シャフト・ドライブ」とは??

Pequignet ROYALE Origine Manuelle ペキニエ ロワイヤル アニュアル 平置き シルバーサンバースト ダイヤル  ジャン・ルソー Calibre Royal Manuel キャリバー ロワイヤル マニュアル センター シャフト ドライブ
Calibre Royal Manuel

 一般的な1番車は「香箱車」とも呼ばれ、ゼンマイを収めている「バレルと同一」です。そんなゼンマイがほどける力の影響は一定の回転力だけではありません。中では常に複雑なエネルギー変化が起きている状態なのです。例えるなら〝荒れ狂う暴風〟でしょうか??

 そんな暴れ馬「香箱=1番車」から力を受け取る2番、3番と続く輪列には、想像以上の負荷がかかっています。バレルを支える軸の受け穴はその筆頭。強い摩擦力で長期にわたり避けられない摩耗を繰り返している状態です。

 機械式時計は常に〝摩擦との戦い〟で進化してきました。そこでペキニエさんは考えたわけです。「ゼンマイの力をダイレクトに受け続ける1番車の構造を、マルッと見直せば良いんじゃね??」と。

 そうして生まれたのが、国際特許を取得した「センター・シャフト・ドライブ」でした。

 考え方はシンプル。バレルから純粋な回転力のみを伝達するため、バレルの役割を「ゼンマイによるエネルギー源」のみとし、ほどけるゼンマイが生み出した回転力を、中心のバレル軸からバレルの直下に配置した1番車に伝える… いやこれ、素人にも解りやすい!!

 「センター・シャフト・ドライブ」により1番車の動作が安定し、各輪列のパワーロスも解消。宿命として諦められていた摩擦の問題が粗方解決するとともに、摩擦の元凶として避けられてきた「大きなゼンマイ」の使用も可能になりました。まさにコロンブスの卵。無理のない21,600振動で100時間という超ロングパワーリザーブも達成しています。

 現代の生活者がストレスなく使える「実用手巻き」の合格ラインは〝3日間パワーリザーブ〟ではないかと考えている砂布巾ですが、摩擦を制して〝約100時間動作〟の金字塔を打ち立てた「Calibre ROYAL(キャリバー ロワイヤル)」が、現代における〝使える手巻きムーブメント〟の在り方を定義し直す存在であることは確かです。

シルキーで真珠のような「ダイヤル」

Pequignet ROYALE Origine Manuelle ペキニエ ロワイヤル アニュアル 平置き シルバーサンバースト ダイヤル  ジャン・ルソー アロー針
ロワイヤル・マニュアル 9080413-CA

 シルクのように滑らかで、真珠のようにきらめく「シルバーサンバースト ダイヤル」も刺さりました。42ミリケースの開口部ですからそれなりにデカいわけですが、こんなに素敵なダイヤルをたっぷり見せてくれるのであれば、むしろデカさは〝ご褒美〟でしょう。実際、ウチのコレクションのシルバー・ホワイトサンレイダイヤル関係でいえば、トップ級に良く出来ています。

 針もねぇ… ブルースチールがやたらとキレイなんですよ。「ロワイヤル マニュアル」には幾つかの針パターンが存在していましたが、私はとにかく「アロー針」のモデルがどストライクでした。しっかりと立体感が感じられるインデックスにも見応えがあります。

上品な「ケースデザイン」が好きだ!!

Pequignet ROYALE Origine Manuelle ペキニエ ロワイヤル アニュアル 平置き シルバーサンバースト ダイヤル  ジャン・ルソー  12時位置 ラグ
ロワイヤル・マニュアル 9080413-CA

 ペキニエさんは「ケース」も良いのですよ。「ロワイヤル マニュアル」の場合、ケース径が42ミリもありますし、その分しっかりとした存在感があります。ただ「デカい!!」という印象は全くといっていいほど感じていません。

 数値的なサイズはたしかに大きめですが、流麗なアウトラインと丁寧な仕上げが繊細で上品なので、評価基準としてのサイズ感が気にならないのかもしれません。まず、ケースの美しさと存在感に心を奪われ、しばし感傷に浸ったあとでようやく「そういえばそこそこデカいな」と思い返す… そんな感じだと思います。

Pequignet ROYALE Origine Manuelle ペキニエ ロワイヤル アニュアル 縦置き 側面 シルバーサンバースト ダイヤル  ジャン・ルソー
ロワイヤル・マニュアル 9080413-CA

 Paris Fashion Week(パリ・ファッションウィーク)でランウェイを歩く女性のモデルさんって、皆さん高身長じゃないですか?? 最高峰のショーだと180センチ以上を求められることがザラ。ヒールを履いたら190センチですよ。それでも最初の印象が「デカい!!」にはなりません。「スタイル良いなぁ」「キレイだなぁ」が圧倒するからです。

 そこは「ロワイヤル マニュアルのケース」も同じです。

あのムーブメントにして、この「ロワイヤル マニュアル」である

Pequignet ROYALE Origine Manuelle ペキニエ ロワイヤル アニュアル 横置き シルバーサンバースト ダイヤル  ジャン・ルソー
ロワイヤル・マニュアル 9080413-CA

 「ロワイヤル マニュアル」… 実に面白い時計ですよ。

 スイス製ならエボーシュでもおかしくない価格帯で、フランスで設計、製造された初めてのハイエンドムーブメント「キャリバー ロワイヤル マニュアル」を搭載。しかもその重要事実を誇示するでもなく、あくまで何気ないスモセコ3針として成立させているわけですよ。この辺りがフランスの美学… 意地なんでしょうねぇ。

 だからこそ… 淑やかな顔立ちだからこそ、内蔵された強力なエンジンが際立つのです。この「表と裏の落差」が何よりも楽しい「ロワイヤル マニュアル」です。

Pequignet ROYALE Origine Manuelle Specifications
ケースステンレススチール(ポリッシュ仕上げ)
リューズフルール・ド・リス(ユリ紋章)ロゴ刻印入りリューズ
ダイヤル仕様オパーリン仕上げシルバーダイヤル
秒表示6時位置スモールセコンド
ブルースチール針
クラスプフォールディングクラスプ/尾錠(ロイヤルリリー刻印入り)
ムーブメントキャリバー ロワイヤル マニュアル®(手巻き)
振動数21,600振動/時
石数21石
テンプ調整ネジ付き大型テンプ
ケース厚12.3mm
防水性能10気圧防水
ケースバック6本のネジで固定、サファイアクリスタルのシースルーバック
パワーリザーブ約100時間

 とまあ、私が所有するたった一本のペキニエについて、長々と語って参りました。敢えて「旧設計」「新設計」と分けますが、42ミリと「かなりデカいスモセコ3針」である旧設計「ロワイヤル マニュアル」にしても、ある意味時代を超越したデザインの集合体なので、まるで古臭さを感じません。これはこれで〝存在が成立〟しているからです。

 しかし、その辺りが気になる方にペキニエの面白さが届かないのは、実に勿体ない話です。そんな方々に向けて、ペキニエさんは〝新設計版ロワイヤル〟の展開を充実させています。

知らなきゃ損!! ペキニエの現行主力モデルたち

 ペキニエの日本輸入総代理店である「カリブルヴァンテアン株式会社」さんのご厚意で、数度にわたり、現行モデルを見せていただく機会がありました。

 ところが、半ば興奮状態に陥りながら実機の観察に全力を投入していたせいで、肝心の「写真撮影」が疎かになってしまいました。Concorde(コンコルド)なんてアレだけ観察しまくったのに、一枚の写真も押さえていないなんて… (;´Д`)

 それに関しては間違いなくペキニエの時計たちに罪があります。 あのコレクションを目の前にして冷静に振る舞うなんて… 私には土台無理な話でした(笑)

 というわけで「新しいロワイヤル」の幾つかをご覧下さい。

ロワイヤル パリ Ⅱ(ROYALE ParisⅡ)

 それでも何やかんやで押さえてきた写真の数々で、目くるめく「ペキニエの世界」をご覧にいれたいと思います。この日は「ロワイヤル パリ Ⅱ」を集中的に拝見。撮影場所は浜松町の「時計修理相談室 浜松町本店(モントル ペキニエ)」さんです。

ロワイヤル パリ Ⅱ キャトル フォンクション(ROYALE ParisⅡ 4Fonctions)

ロワイヤル パリ Ⅱ キャトル フォンクション ROYALE ParisⅡ 4Fonctions ペキニエ Pequignet ダイヤル シースルーバック
ROYALE ParisⅡ 4Fonctions 出典:https://japan.pequignet.com/

 41ミリ、42ミリで展開されてきたロワイヤルに対し、より小径の「39.5ミリ」のケースを採用して、新たな視野を広げた「ロワイヤル パリ Ⅱ」。中でも「キャトル フォンクション」は4つの機能を贅沢に配置したモデルです。

 ロワイヤルシリーズに共通する特徴的なラグはそのままに、小径になったことで、元々秀逸だった仕上げの良さがさらに際立つ「ケース」。上面は繊細なブラッシュ、側面は滑らかなポリッシュで仕上げられ、繊細で上品なダイヤルデザインを額縁から際立たせています。

ロワイヤル パリ Ⅱ キャトル フォンクション「ダイヤルデザインの妙」

ロワイヤル パリ Ⅱ キャトル フォンクション ROYALE ParisⅡ 4Fonctions ペキニエ Pequignet シルバー ホワイト ダイヤル 平置き
ROYALE ParisⅡ 4Fonctions

 ダイヤルは梨地調の粒子テクスチャーで仕上げられており、まるで日本庭園のように静謐な美しさを湛えています。

 そんなダイヤル最大の特徴は「ガウジ」と呼ばれる丸ノミで彫られたような〝溝〟。これによりインデックスに独特の浮遊感が与えられ、同時に視認性が最大化しています。

 レイヤーのように交差する「サブダイヤル」の配置も「キャトル フォンクション」の見どころでしょう。

 要素が散ってしまいがちな多機能時計の問題点を逆手に取って一連の機能を集中させることで、他では見られない個性的なダイヤルデザインになってます。実際、これだけ多くの機能表示があって、これだけダイヤル面にゆとりのあるデザインは珍しいと思います。

 トータルデザインの完成度を妨げない「小さめビッグデイトの配置」も見事です。

癒し効果バツグンの「お月さま」

ロワイヤル パリ Ⅱ キャトル フォンクション ROYALE ParisⅡ 4Fonctions ペキニエ Pequignet グリーン ダイヤル 平置き
ROYALE ParisⅡ 4Fonctions

 個人的には「ムーンフェイズ」という機能にさほど興味はありません。設定が億劫で放置しがちな割には、夜空を見上げたときに〝月齢が合ってないとやたら気になる〟… そんな厄介な機能だと思っています(汗)

 しかしこの「キャトル フォンクション」のムーンフェイズは例外かもしれません。大抵のムーンフェーズはそのビジュアルの良さで〝特別扱い〟される傾向にありますが、「キャトル フォンクション」に関してはあくまで「機能の一部としての月齢表示」という割り切りが美しく見えました。やはり、集合した機能配置が絶妙なのかもしれません。北半球と南半球の2つの月齢を表示するという、律儀な作りにもグッとくるものがあります。

 だからこそ、この「お月さま」から受ける癒しは格別。リアルな写真から描き起こした月の美しさは必見です。

ダイヤルの隅々まで視界良好に見せる「風防」

 風防は反射防止コーティングが施された「ドーム型のサファイアクリスタル」です。一見特別な風防には見えませんが、ダイヤル面との距離感、特にガウジカットを美しく見せるという点においても、最適化された風防であると感じました。

今どきのストラップは「アビエ」じゃないとね!!

ロワイヤル パリ Ⅱ キャトル フォンクション ROYALE ParisⅡ 4Fonctions ペキニエ Pequignet ブルー ダイヤル 平置き
ROYALE ParisⅡ 4Fonctions

 ストラップがインターチェンジャブルであることは、時計を購入するユーザーへの〝最大配慮〟です。もはや新作時計に「必携の機能」と言えるでしょう。

 ロワイヤル パリ Ⅱは「アビエ式のストラップ交換システム」を完備。手に入れたその日から自由なストラップコーディネートを楽しめます。

ムーブメントは「キャリバー ロワイヤル(自動巻)」

ロワイヤル パリ Ⅱ キャトル フォンクション ROYALE ParisⅡ 4Fonctions ペキニエ Pequignet Calibre ROYAL  キャリバー ロワイヤル
ROYALE ParisⅡ 4Fonctions Calibre ROYAL

 搭載するのはペキニエ謹製、EPM01「Calibre ROYAL(キャリバー ロワイヤル)」。センター・シャフト・ドライブを搭載したロワイヤルの自動巻版です。やっぱり見た目が面白過ぎですね(笑)

 パワーリザーブは96時間。時計の複雑機構を同一プレート上に配置するスマートな設計で、8つの国際特許を取得しています。

 また、キャリバー ロワイヤルは他の3つの自社製ムーブメントと同様、日差は-4秒から+6秒の間で推移。即ちこれは〝クロノメーター級の精度〟に相当します。何気にスゴいです!!

SROYALE ParisⅡ 4Fonctions pecifications
ケースポリッシュ&サテン仕上げステンレススチール/ボックス型反射防止サファイアクリスタル/「fleur de lus」ロゴ入りリューズ/スクリュー固定ベゼル/8時30分位置にムーンコレクター
ダイヤル詳細グレインテクスチャー仕上げ/ロジウムメッキ立体ロゴ/ポリッシュ&サテン仕上げの面取りインデックス/8時位置パワーリザーブ表示/3時30分位置スモールセコンド/6時位置ダブルムーンフェイズ(両表示をダイヤモンドポリッシュ加工)/大型ポリッシュデイト表示/北半球・南半球対応リアルムーン表示/ブルー発光Super-Luminova TC1付き時分針、ポリッシュ仕上げ秒針&パワーリザーブ針
クラスプスチール製フォールディングクラスプ
ムーブメント詳細Calibre Royal®/21,600振動/約96時間パワーリザーブ/39石/サンレイ&ロジウム仕上げ3Nローター/緩急ネジ付き大型テンプ
ケース厚11.5mm
防水性能5ATM
ケースバック6本のネジ固定/ムーブメント鑑賞用サファイア開口部
ムーンフェイズあり
パワーリザーブ96時間

ロワイヤル パリ Ⅱドゥフォンクション(ROYALE Paris Ⅱ 2Fonctions)

ロワイヤル パリ Ⅱドゥフォンクション ROYALE Paris Ⅱ 2Fonctions ペキニエ Pequignet ダイヤル シースルーバック
ROYALE Paris Ⅱ 2Fonctions 出典:https://japan.pequignet.com/

 こちらはデイデイトとムーンフェイズを取り去り「2つの機能」に絞った「ドゥフォンクション」です。こちらの方がシンプルで好きという方もいらっしゃるでしょう。ムーブメントはEPM01「Calibre ROYAL(キャリバー ロワイヤル)」です。

「ドゥフォンクション」は使える〝幅〟が広い

ロワイヤル パリ Ⅱドゥフォンクション ROYALE Paris Ⅱ 2Fonctions ペキニエ Pequignet ブルー ダイヤル 平置き
ROYALE Paris Ⅱ 2Fonctions

 サブダイヤルが減りダイヤル面が大きく露出したことで、「ロワイヤル パリ Ⅱ」本来のシックなデザイン思想を楽しめるモデルと言えるかもしれません。

 その僅かなシンプルさゆえに、礼装からTシャツまで、様々な装いで袖口を任せられるのは「キャトル フォンクション」よりも「ドゥフォンクション」だと思います。

大人のための「大人ウォッチ」

ロワイヤル パリ Ⅱドゥフォンクション ROYALE Paris Ⅱ 2Fonctions ペキニエ Pequignet シルバー ホワイト  ダイヤル 平置き
ROYALE Paris Ⅱ 2Fonctions

 実に〝良い顔〟をしています。今風のチャラさとは無縁の「大人のための大人ウォッチ」… サイフォンで淹れた苦いコーヒーを片手に、いつまでも眺めていたい… そんな時計です。

ROYALE Paris Ⅱ 2Fonctions pecifications
ケースポリッシュ&サテン仕上げステンレススチール/ボックス型反射防止サファイアクリスタル/「fleur de lus」ロゴ入りリューズ/スクリュー固定ベゼル
ダイヤル詳細グレインテクスチャー仕上げ/ロジウムメッキ立体ロゴ/ポリッシュ&サテン仕上げの面取りインデックス/8時位置パワーリザーブ表示/3時30分位置スモールセコンド/ブルー発光Super-Luminova TC1付き時分針、ポリッシュ仕上げ秒針&パワーリザーブ針
クラスプスチール製フォールディングクラスプ
ムーブメント詳細Calibre Royal®/21,600振動/約96時間パワーリザーブ/39石/サンレイ&ロジウム仕上げ3Nローター/緩急ネジ付き大型テンプ
ケース厚11.5mm
防水性能5ATM
ケースバック6本のネジ固定/ムーブメント鑑賞用サファイア開口部
ムーンフェイズなし
パワーリザーブ96時間

ロワイヤル パリⅡ36MM(ROYALE ParisⅡ36MM)

ロワイヤル パリⅡ36MM ROYALE ParisⅡ36MM ペキニエ Pequignet ブルー ダイヤル 平置き シースルーバック
ROYALE ParisⅡ36MM 出典:https://japan.pequignet.com/

 自動巻「Calibre Initial」を搭載したシンプルな中3針「ロワイヤル パリⅡ36MM」です。

ロワイヤル パリⅡ36MM ROYALE ParisⅡ36MM ペキニエ Pequignet ブルー ダイヤル 平置き シースルーバック Calibre Initial キャリバー イニシャル
ROYALE ParisⅡ36MM Calibre Initial

 約65時間のパワーリザーブで日差は-4秒から+6秒。「Calibre ROYAL」と比べると尖った個性はありませんが、受け板もローターも、仕上げのレベルは高級機そのものでした。見た目と性能のバランスで言えば、かなりハイレベルなムーブメントです。

思わずため息が漏れる「サンバースト ダイヤル」

ロワイヤル パリⅡ36MM ROYALE ParisⅡ36MM ペキニエ Pequignet シルバー ホワイト ダイヤル 平置き
ROYALE ParisⅡ36MM

 美しい針とインデックスが映える「サンバースト仕上げの文字盤」が印象に残ります。

 インデックスエリアを一周する「ガウジ」で形作られる〝セクターダイヤル〟も、3針ならではの整ったバランスで存分に楽しむことができます。

そこはかとなく「上質」

ロワイヤル パリⅡ36MM ROYALE ParisⅡ36MM ペキニエ Pequignet ブルー ダイヤル 平置き
ROYALE ParisⅡ36MM

 とにかく上品です。シンプルだけど余計な間延びは一切感じさせません。こういう安っぽくない3針モデルは、作りたくても作れないメーカーが多いように思います。〝そこはかとなく上質な時計〟って、実は一番難しい目標だったりするからです。

ロワイヤル パリⅡ36MM ROYALE ParisⅡ36MM ペキニエ Pequignet レッド コーラル ダイヤル 平置き
ROYALE ParisⅡ36MM

 税込み価格「83万6000円」。安い時計ではありませんが、それだけの質感、それだけのメカニズム、それだけの思想が詰まった「ロワイヤル パリⅡ36MM」です。

ROYALE ParisⅡ36MM pecifications
ケース316Lステンレススチール/ケースのポリッシュ&サテン仕上げ/ボックス型反射防止サファイアクリスタル/「fleur-de-lys」ロゴ入りリューズ/スクリュー固定ベゼル
ダイヤル詳細ブルーダイヤル/ギョーシェ風サンレイテクスチャー/ブルー発光Super-Luminova TC1付きポリッシュ仕上げ時分針/ポリッシュ仕上げ秒針
クラスプサテン仕上げスチール製アルディロンバックル
ムーブメント詳細Calibre Initial®/4Hz(28,800振動)/21石/ストップセコンド機能/「fleur de lys」ロゴ入りスケルトンローター
ケース厚8.95mm
防水性能5ATM
ケースバック6本のネジ固定/ムーブメント鑑賞用サファイア開口部
パワーリザーブ65時間

※浜松町での撮影には「Xiaomi 15T Pro」を使いましたが、光量不足で正直、イマイチの写真になってしまいました。もちろん、実物は遥かに美麗です。是非是非、美しい実機をご覧ください ( ;∀;)

フランスの同志に向けた「ムーブメント提供」

 ペキニエさんについて私なりに色々と語って参りましたが… 一つだけ確かなことは「自分たちだけ栄えれば良い」と考えているブランドではないという点です。その証明がエミール・ペキニエ・マニュファクチュールの略である〝EPM〟の03番「キャリバー・イニシャル」の外部提供。

 その目的はもちろん〝フランス時計産業の発展〟を願ってのこと。ですから基本的には、フランスの時計産業を支えているブランドに限った提供です。

 伝統的な幾つかの装飾が施された「EPM 03」は4Hz(28,800振動/時)動作。直径は28.2ミリ、厚さは4.2ミリ。時、分、センターセコンドの構成でデイト付き。

 現代的な設計で65時間のパワーリザーブを備える「EPM 03」は、非公式ながら『セリタとボーシェの間の価格で取引』と言われています。ペキニエの今後の成長、ひいてはフランス時計産業の発展を支える事業として、その動向が注目されるところです。

 すでに一つの時計ブランドに留まらない遠大な構想「フランス時計産業の黄金時代創出」に向けて動き出している「ペキニエ」。ペキニエを中心とした物語には〝夢〟があります。

Watches and Wonders 2026 で〝期待通りの新作〟が出た!!

ロワイヤル パリ クロノ ROYALE PARIS CHRONOペキニエ Pequignet シルバー ホワイト ダイヤル 直立 バイコンパックス
ROYALE PARIS CHRONO 出典:https://japan.pequignet.com/

 初めて「ロワイヤル パリ Ⅱ」を拝見した際、この美しいダイヤルには『整然としたバイコンパックスが絶対に似合う』というイメージがありました。そして、ペキニエさんはそんな私の思惑通り(?)のクロノグラフを、4月の「Watches and Wonders 2026(ウォッチズ&ワンダーズ)」で発表してくれました。

 「ロワイヤル パリ クロノ(ROYALE PARIS CHRONO)」… ほら!! めっちゃ格好良いでしょ?? しかも〝ノンデイト〟!! これです。今作るべきクロノグラフはこれなんです。

 そして「Concorde Collection(コンコルド)」以外ではイメージのなかった「ブレスレット」を装備。コンコルドのブレスに近いアウトラインですが、ロワイヤル パリ用に新設計された物のようです。この「弓カン」の泣かせること(弓カンマニアに刺さります)

 ケース径は「39.5ミリ」。ペキニエが新たに開発した「キャリバー Initial クロノグラフ」を搭載。お値段が気になるところですが、これまでペキニエの時計に関心の薄かった層にも届く〝起爆剤〟になる可能性を感じます。絶対に実機を見に行かなくちゃ (*´ω`*)

最後に… 腕時計における「メイド・イン・フランス」が、世界を席巻する日

 フランスがラグジュアリー分野に強い国であることは確かです。世界に冠たる眩しいほどのブランドを多く有していますし、それらの分野における「メイド・イン・フランス」は、イコール〝最上品質の証明〟です。

 ところが冒頭でも申しました通り、腕時計の話となると事情は変わります。ご存知の通り、高級腕時計市場における絶対王者は「スイス・メイド」なのです。実際、桁違いの売上は他の追随を許しませんし、「精密で美しい時計はスイス製!!」という固定化された概念は、並大抵のことでは崩れません。素晴らしいメーカーが軒を連ねるドイツですら、数字とイメージの両面で大きく水をあけられています。

 そんな「スイス王国」に鋭利なランスを打ち込む可能性があるのは、もしかすると「メイド・イン・フランス」だけかもしれません。そしてその先頭に、今回お話した「ペキニエ」さんがいるのは間違いないでしょう。

 実際、敢えて自ら旗振り役を買って出たペキニエさんにかかる期待は小さくありません。ペキニエさんの成否が、そのままフランス時計産業のイメージに置き換わる可能性が高いからです。

 ただ、数多のマイクロブランドを含めて、現在のフランス時計産業には〝打倒スイス〟的な勢いがあります。ラグジュアリーという〝絶対価値観〟で身を固めたスイスには望むべくもない「びっくり箱的おもしろさ」を見せ続けてるペキニエさんであれば、スイスには無いモノサシ…〝フランス時計産業だけの価値基準〟に手が届くかもしれません。

 ペキニエさんが紡いでいる物語は、いずれ何らかの形で時計勢力図に影響を与えるはずですし、巡り巡って皆さんの消費行動にも作用するかもしれません。つまり今、目の前で起きている〝ペキニエ革命〟を知らずにいるのは、少々勿体ないことのです。

※撮影機材: SONY α7RⅤ + FE 70-200mm F4 Macro G OSS II + FE 100mm F2.8 Macro GM OSS + Xiaomi 15T Pro Adobe Lightroom で編集

買ったからこそ書ける記事がある…

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コメント一覧 (2件)

  • さすがのフランス産、かなりお上品な
    文字盤ですね!
    (文字盤の、fabrique en franceの文字がいい!)

    フランス発のブランドはあれど、自社一貫製造製造となると
    ペキニエくらいなんでしょうか。

    そう考えるとちゃんと防水性能もありますし、プライスもリーズナブルな感じがします!

    • Y太さま、コメントありがとうございます♫
      もはやオフィシャルコメンテーター(笑)
      常々ありがたいと思っています。

      ペキニエさんのデザインはどんどん素敵になっていきますね。
      スイス製なら幾らになる??みたいな時計が揃っているので、
      本質を見極めて時計を購入する方にとっては、今も激安の部類と言われています。
      マニュファクチュールですもん!!

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