スウォッチ関連でいえば、ここ最近は「Royal Pop(ロイヤルポップ)」の話題が中心でした。だからといって一歩引いていたわけではないと思いますが、数年前に凄まじいブームを巻き起こした「Moonswatch(ムーンスウォッチ)」の露出は控えめで、その勢いに多少の翳りを感じるところもありました。
とはいえ、スウォッチさんの凄まじい企画力がなければ、あれだけの展開を短期間で行うことは不可能でした。スウォッチだから実現した前代未聞のタイムピース。僅か数年間の出来事とはいえ「ムーンスウォッチ」の名前は、時計史における偉大な足跡として記憶されるはずです (*´∀`*)
黄色い「SUN」とオレンジの「LAVA」を、偉いさんの前で使えるようになるまで

私はこれまでに2本のムーンスウォッチ「MISSION TO THE SUN」と「MISSION ON EARTH LAVA」を購入していますが、どちらも基本的には〝プライベートシーン専用〟なんですよ。つまり、限定された使用機会でしか活躍できていないのです。
スウォッチという時計の楽しさは〝センスの良い遊び〟の中にこそありますが、それを一々説明できない場所。例えばお堅い会社の真剣な会議の場などでは、身に付けたスウォッチのカラフルな意匠が「真剣味が足りない」などと曲解される可能性もあるわけです。面倒な話ですけどね (;´∀`)
私が購入した2本のムーンスウォッチが、黄色とオレンジの「派手な部類」だったというのもありますが、購入直後のウキウキ状態でも仕事場に着けていくことは自重しました。購入から月日を経て立場も変化し、ようやく「こういうのもアリだろう!!」と思えるようになってきたので、袖口を軽いイメージにしたいときに、ムーンスウォッチの出番を増やすようにしました。
ここに来て「絶対に欲しいムーンスウォッチ」が出てきた!!
元々の〝スピードマスターデザイン〟の格好良さに、文句の付けようがないことはもちろんです。さらに言えば、マルセル・デュシャンの「コンセプチュアル・アート」にも似た〝洒落の効いたアートを身に着けている〟という感覚が、ムーンスウォッチ全体の〝価格帯を逸脱した満足感〟にも繋がっていると思います。
だからこそ、お堅い場所でもすんなり使える「ムーンスウォッチ」を渇望していました。Swatch Harajuku Streetlevel Storeさんで拝見した「MOONSWATCH 1965」なんてかなりいい線でしたが、もう少し…「あと一声!!」みたいなところで決断には至りませんでした。何があと一声なのかを言語化するのは困難でしたが… (;´∀`)
そして見付けました。私が求めていた「あと一声の正体」。あらゆるシーンで自在に活躍する「理想のムーンスウォッチ」… それが「MISSION TO THE MOON 1969」。

このモデルは世界で僅か「1969本」の限定販売です。しかも「ESTA(Electronic Swatch Timepiece Application)」という電子申請を通じて申し込まなければならないという、些か複雑な手続きを必要としています。予想される当選確率から言っても、コイツはちょっとした宝くじ。
ちなみにワタクシ、写真を見てすぐにダメ元で応募しました。そのあとで遅ればせながらお値段を確認。一瞬、言葉を失いましたが… 高くても構わん!! 今度のムーンスウォッチには「絶対に欲しい」と思わせる理由があるからです (*´∀`*)
※ESTAの答えをお探しの方へ:弊サイトではブランドの意図やフェアな機会を尊重する考え方から、越えてはいけない一線として、直接的な解答の掲載は行っておりません。
またムーンスウォッチの色違い?? と思ったら、今回は様子が変だ

スウォッチの新作情報といえば「何となく薫ってくる」あの感じ。私の目にも最初はSNSを含めた断片情報として入り、その後で詳細を確認しています。
これまでに多様なアイデアを形にしてきた「ムーンスウォッチ」ですが、基本的には通常のクロノグラフとムーンフェイズ仕様の2系統を土台に、ケースカラーやダイヤルデザインを変更したものです。言ってしまえば新作というより〝バリエーションの追加〟。
ですから新作が登場すると聞いても、心の何処かで「今度はどんな色展開??」みたいに、少々冷めたものの見方をすることもありました。
ところが「MISSION TO THE MOON 1969」の写真を拝見して、何やら解ったような気持ちでいた自分をぶん殴ってやりたくなりました。一瞬、ほんの一瞬で易々と恋に落ちたからです (*´ω`*)
「MISSION TO THE MOON 1969」 漆黒のバイオセラミックがシブい!!

42ミリ幅のケース素材はお馴染みの「バイオセラミック」。酸化ジルコニウムのセラミック粉末とヒマシ油を原料にして生まれたスウォッチの独自マテリアルです。
写真で見るとプラスチックみたいに見えますが、実物は密度を感じさせる滑らかな質感で、プラスチックとは比較になりません。
「MISSION TO THE MOON 1969」のケースにはマットブラックに染め上げられたバイオセラミックが使われていますが、これが非常に美しい!! バイオセラミックが最も美しく見えるのは漆黒かもしれませんね。ダイヤルにもこのブラックを活かし切るアクセントが随所に見られます。
ケース本体がマット仕上げなのに対し、ベゼルは光沢仕上げです。これにより、同じブラックの中に異なる質感の幅を持たせています。全てはスウォッチさんの手のひらの上って感じ(笑)

ケースの側面には、限定であることを示す個体番号がゴールドラッカーで記されています。こんなところまでお洒落ですね (*´ω`*)
スウォッチを超えた「バグったダイヤル」

スウォッチと言えば「Tシャツのように気軽に使える腕時計」… だったはずですが、その認識を改める必要が出てきたかもしれません。
マットブラックで引き締まった「MISSION TO THE MOON 1969」のケースを額縁に、ただならぬ色気を放つのが「18Kムーンシャイン™ゴールド製のダイヤル」です。18Kですよ?? もはや気兼ねなく使えるコンセプトからは、完全に逸脱しました。
針もリューズもプッシャーも18K。本物のゴールドの輝きに満ちたその姿は、超高級腕時計のダイヤルそのものです。いやこれは、とんでもない代物です。
その仕上げも素晴らしいの一言。縦方向に刻まれた「バーティカルサテン」がゴールド特有のいやらしさをマイルドに整え、何とも上品な風合いを醸し出しています。
屹立する「オメガマークの存在感」も素晴らしいです (*´∀`*)
ムーンシャインゴールドとマットブラック –– 完璧なツートーン

丁寧に面取りされたアプライドインデックスには、蓄光塗料ではなく「ブラックニス」が施されています。蓄光好きとしては残念な話ですが、これだけのコントラストがあれば、蓄光の必要性を感じるシーンは限られるでしょう。黒いクロノ針も抜群にソリッド&クール!!
クロノグラフ各サブダイヤルの小さな針に至るまで、漆黒で統一されていますが、こうした引き算の美学が、本モデルをこれまでのムーンスウォッチとは異なるカテゴリーに押し上げていると思います。足し算で幾つもの面白みを生み出してきたムーンスウォッチが、初めて高級腕時計と同じ「引き算」で〝上品さを獲得〟したからです。
今回はゴールドを主体にした時計ですし、ともすればケバケバしさが表面化してもおかしくなかった。ところが、ケースやインデックス、そして針に至る「マットブラック」の押し殺した存在感が、それらを杞憂にしました。いやむしろ、これ以上ない組み合わせのツートーンとして、必然性を与えたと言っても良いでしょう。

スタイリッシュなパターンが刻まれた「黒いラバーストラップ」にも、所々にゴールドが差し込まれています。裏面には月面のテクスチャーを模した金色のシートが貼られており、これら差し色の使い方も見事としか言いようがありません。オメガもスウォッチも関係なく、とにかくお洒落で粋な時計として評価されるべきです (*´∀`*)
使用されたゴールドの純金含有量だけで「MISSION TO THE MOON 1969」の価格以上??

「MISSION TO THE MOON 1969」のお値段は「10万2300円」です。スウォッチの常識からするとお高いように思えますが、使用されているゴールドの総量は「11グラム(18K)」もあります。数字で言われても、いまひとつピンとこないかもしれませんね。
※本記事のリリース時に使っていたデータが古過ぎたので、最新の相場を反映して出し直しました(あくまで参考値としてご覧ください)
24K(2万2500円/g)から18K 1gの値段を算出します
2万2500円 × 0.75 = 1万6875円
18K(1万6875円/g)に 11 を掛けて 11gの値段を算出します
1万6875円 × 11 = 18万5625円
金価格は日々変動しますし、取扱業者の手数料や利益幅でも手元の数字は変化します。それでも時計本体の価格を大幅に上回る計算ですから、何とも夢のある話です。
「1969年」に紐づけた象徴的な価格設定
スウォッチさんは何よりもストーリーを重視するメーカーですし、今回の「MISSION TO THE MOON 1969」に関しても、その企画性において怖いくらいの徹底を貫いています。
MISSION TO THE MOON 1969の「1969」は、1969年7月に人類史上初めて宇宙飛行士を月面に着陸させ、無事に地球へ帰還させたNASAの有人宇宙飛行計画「アポロ11号(Apollo 11)」に由来しています。
その偉業を記念して同年に製作された「ゴールド製のスピードマスター」がありました。「MISSION TO THE MOON 1969」は、その特別なスピードマスターへ敬意を表したオマージュです。
「MISSION TO THE MOON 1969」のゴールドには、1969年当時にストックされていたオメガのスペアパーツを溶かし、新たに〝ムーンシャイン™ゴールド〟として組成し直したものが使われています。この「1969」への異常なまでの執着。11グラムの金総量にしても、アポロ11号を連想させますからね。
極めつけは「MISSION TO THE MOON 1969」の価格設定です。スウォッチは、この時計に使用したゴールドを1969年7月21日当時の金価格に置き換えるという、きわめて象徴的な考え方を販売価格に反映しました。
もちろん、現代の原価まで1969年へ巻き戻せるわけではありませんが、「MISSION TO THE MOON 1969の物語」を価格にまで貫いた姿勢には痺れました。企画としての完成度を突き詰めることで、この有り得ないお値段が決まったのだとすれば、辺境の一時計好きに過ぎない私の胸が熱くなったとしても、仕方がないと思います。
電子渡航認証に似せた「32の質問」は悪ノリ??
MISSION TO THE MOON 1969をご購入いただくための承認申請の機会です。申請の準備はできていますか?
Electronic Swatch Timepiece Application(ESTA)の入力完了までの制限時間は2時間15分です。 時間の使い方を決めるのはあなた自身。さあ、始めましょう。
上記の囲いの文言は「MISSION TO THE MOON 1969」の購入権を得るための関門、電子申請「ESTA(Electronic Swatch Timepiece Application)」の入口に表示されている注意文です。
さて、ここから先は制限時間2時間15分の中で、意地の悪い「32の質問」に答えなければなりません。ここまでやる必要があるのか評価が分かれそうですが、私自身はイベントとして楽しく挑むことができました。ただ、全問正解が条件だとすれば、私はすでに失格していると思います。明らかに1問間違っちゃったので (;´Д`)
人によっては「時計購入のためだけにやり過ぎではないか??」「そもそも悪ノリだ!!」と感じる人もいるかもしれません。実際、それくらいの負担は感じる作業でしたし、いわゆる電子渡航認証のオマージュだとしても、もっとシンプルで機械的な質問にラジオボタンでも付けておけば、3分で終了したのは確かです。
「ムーンスウォッチ理解度チェック」??

ただ、それだと何とも味気ないですし、特別なムーンスウォッチを手に入れるエクスペリエンスに見合わないとスウォッチは考えたのでしょう。
そこでスウォッチの歴史や文化、アポロ計画のトリビアを織り交ぜながら、応募者に一種の「入国審査」を課したのでしょう。特別なムーンスウォッチのオーナーになる覚悟はありますか?? と一風変わった質問攻めで確認を取ったわけですね。「ムーンスウォッチ理解度チェック」とも言えるかしら??
もちろん「転売しない意志」の確認もありました。正直に申告する転売ヤーがいるとも思えませんので、抑止効果のほどは謎ですが (;´∀`)
これには何の確証もありませんが、数問設定されていた自由記述(作文)が合格(?)のポイントなのかなぁ~と、今になって思います。スウォッチさんが本気で解答内容を吟味するのであれば、自由記述くらいしか見るところがありませんからね。
ちなみに私は、アポロ13号ネタで〝掟破りの逆トリビア〟を仕掛けてみました。果たしてどう転ぶか…(笑)
転売前提でもない限り「10万2300円」は安い買い物ではない
「今度のムーンスウォッチ、めっちゃええやん!!」と、ド直球で心臓を抉られた私ですが、正直言って「10万2300円」の出費はキツいです。心の片隅で「スウォッチに出す金額じゃないぞ!!」と思っている自分がいます(笑)
ゴールドの部分だけで小売価格をはるかに上回る価値があるとはいえ、転売目的でもない限りその恩恵を感じることはできません。使い続けて時計本体がボロボロになっても〝金の価値は残る〟… この一点にロマンを感じられるかどうかが、後悔するしないの分かれ目になりそうです。
ヴィンテージの中には冗談半分で「溶かした方が価値がある」なんて言われる時計もあります。実際は残酷過ぎてそこまでやれそうにありませんが、ズタボロになっても、何十年経っても価値が残り続ける、何なら元の価値を大きく上回るかもしれない… その辺りが「金を使った時計の楽しみ」であることは間違いないでしょう。
最後に…「MISSION TO THE MOON 1969」が示す、ムーンスウォッチの新たな方向性

ムーンスウォッチについて記述した記事の中で、私はムーンスウォッチというプロダクトを「精巧なミニカー」に例えました。フェラーリがあるからフェラーリのミニカーが存在する… 単純にそういう意味でしたが、「MISSION TO THE MOON 1969」の登場でその認識を少しアップデートする必要性が出てきました。
もちろん、オメガのスピードマスタープロフェッショナル、通称「ムーンウォッチ」があってこその「ムーンスウォッチ」であることは変わりません。ただ、初期モデルに見られたある種の〝遠慮〟のようなものは、今回の新作「MISSION TO THE MOON 1969」では感じられなくなっていました。私はこれをシリーズとしての「成長」或いは「逸脱」だと見ています。
その証拠に私自身、「MISSION TO THE MOON 1969」に関しては、初めて元ネタのスピードマスターを意識することなく「単純に格好良い」と思うことができました。このブランドだから好き、このラインナップだから欲しい… そういった〝縛り〟から逸脱することで、プロダクト本来の価値に立ち戻ることができた初めてのムーンスウォッチ… それが「MISSION TO THE MOON 1969」なのかもしれません。
今回「1969縛り」で数多くの拘りを見せた「MISSION TO THE MOON 1969」ですが、その結果として手に入れたものが当初の企画を超えた魅力の解放だとしたら、これは中々に皮肉な話です。
ですがそれこそが、価値観そのものを創造するスウォッチが「運動する企業体」として新たに目指し始めた「方向性」なのかもしれません。ムーンスウォッチという企画の寿命は、私たちの予想より遥かに長いのかもしれませんね。
「MISSION TO THE MOON 1969」の応募期限は、日本時間で「7月22日午前6時59分」です。
スウォッチさんの向かう先を自分の目で見極めるためにも、「ESTA」がワタクシの入国申請を承認してくれるように祈るばかりです (*´∀`*)
| MISSION TO THE MOON 1969 — Technical Specifications | |
|---|---|
| 型番 | SSX01B700 |
| ケース径 | 42mm |
| 厚さ | 13.25mm |
| 防水性能 | 30m |
| 夜光 | なし |
| ムーブメント | クォーツクロノグラフ |
| ストラップ | ブラックラバー、ベルクロ式 |
| 限定本数 | 世界1969本 |
| 価格 | 10万2300円 |
後日談:ワタクシの結果発表!!

ナンボのもんじゃーい!! ダメでしたわー ( ;∀;)
まず、記憶によると(少なくとも)1問は間違っていたはずなので、そこでしくじった私に不満を述べる権利はありません。全問正解が条件ならその時点で落ちていますからね。
見事「承認」された方はおめでとうございます!! 良いなぁ~ 使ってみたかったなぁ~ レビュー記事書いてみたかったなぁ~ ( ;∀;)
ちなみにSNSを拝見すると、通知メールの「却下」の言い回しに「あまりにも失礼だ!!」とお怒りの声が多いようです。私も初見はギョッとしましたが、如何にも機械的に直訳された冷たい言い回しだからこそ、ウダウダと悲しみを引きずらなくて済んでいる気もします。
ホラ、泣くのを我慢しているときに肩をポンポンされると、余計に涙が出そうになりますよね?? 「却下」と言われてムッとするくらいで良かったんですよ。きっと。
幸運の総量は最初から決まっている… なんて言うじゃないですか?? 「MISSION TO THE MOON 1969」を却下されたことで、そこで消費されたかもしれない幸運を別の機会に持ち越せる… そんな風に考えましょう!!
とはいえ… 買いたかった!! ( ;∀;)










ご感想(ログインが必要です)
コメント一覧 (2件)
ムーンスウォッチもちょくちょく新作が出ていますが
これはかなり魅力的でしたね!
早い者勝ちの店頭販売とかじゃないのは工夫を感じて
よかったです。
毎度試験問題を通過した人が買えるようにすれば多少転売対策
にはなりそうですよね。
記述式なんかは特に愛の深さがわかりますよね。笑
Y太さま、コメントありがとうございます♫
くっ… 己のくじ運の無さに愛想が尽きたぜ(泣)
これから徳を積んで、来世に期待します (;´∀`)
早いもの勝ちにしなかったのは、確かに一歩前進ですね。
転売の組織力に対して、どこまで効果があったかは疑問ですが…
いずれにしても、納品直後には明らかになると思いますので、結果を楽しみにしていましょう!!
次は論文形式を希望します。
それなら突破口もありそうですし(笑)