『Baltic』フランスの洒脱が詰まった〝ネオ・クラシック〟

「タイムユナイテッド 東京 2026」は〝時計だらけの大運動会〟だった ―― 独立系ブランドが一堂に会した時計イベントをレポート〈前編〉

 去る5月21日、東京は港区で行われた時計イベント「Time United Tokyo 2026(タイムユナイテッド 東京 2026)」にお邪魔しました。歩くだけで疲れるくらい広大なフロアを借り切って、2日間に渡り行われたイベントでしたが、馴染みのブランドから憧れの高級ブランド、時計文化の未来を担う新鋭ブランドまで、それこそ〝時計に酔える夢空間〟を満喫させていただきました。

 タイムユナイテッドに関しては2026を含めて2度(お誘い自体は3度)伺っています。前々回の会場は東京駅近くのホテルでした。フロントスペースを主会場に、客室の幾つかを展示に使用するスタイルで、まるで時計の迷宮に潜り込んでしまったかのような没入感が印象的でした。

 今回はそんな「タイムユナイテッド 東京 2026」の空気を再現すべく、忙しい中でお話ができた各ブランドさんの様子と、現地でワタクシが受け取った率直な印象を書かせていただきます (*´∀`*)

Table of Contents

実力派「独立系メゾン」が多数集結!!

Time United Tokyo 2026の会場スクリーンと展示フロアの様子 
会場はベルサール御成門 住友不動産御成門タワー 3F
会場はベルサール御成門(住友不動産御成門タワー 3F)

 イベントの公式ページから、参加ブランドさんを書き出してみました(アルファベット順)

AVANT PREMIERELacoste Watches
AiRAiNLes Artisans
Auguste ReymondLöbner
AviatorLundis Bleus
AzimuthM&T FRIENDS
Backes & StraussMeisterSinger
Ball WatchMinase
BLACKOUTMovado
BOSS WatchesMühle Glashütte
CenturyNivada Grenchen
ChronoswissOris
Claude MeylanRaymond Weil
ConcordS.T. Dupont
Cuervo y SobrinosSturmanskie
EdoxTommy Hilfiger Watches
Gaga MilanoTutima Glashütte
HanhartVicenterra
HerbelinVostok Europe
Hermle五十君商店
Ikepod&COAT
Junghans

 う~ん、壮観だ!! 脳が処理しきれていません(笑)

 もちろん全てのブランドさんを余すところなく見て回って、ベロンベロンになる気満々で挑むつもりですが、何せシビアな〝制限時間との戦い〟でもあります。そもそも広い会場を歩き回ることで、早々に私の脆弱な膝が悲鳴を上げるかもですし… ぶっちゃけ、どうなることやら (;´∀`)

敢えて「一般ユーザー」に割り当てられた日に伺いました

 早い段階で数名の関係者から「砂布巾さんはメディアの日に来て下さい」と言われていましたが、見知った顔がいないと淋しいですからねぇ。敢えて「一般ユーザーの日」に伺うことに。案の定、知ってる顔が沢山来場していました。うん、これなら淋しくないぞ~(笑)

 そもそも会場フロアがあるビルの1階で見知った女性と出くわして「入口すぐのところであの人待っていますから」と行動の機先を制された私。仕方がないので(?)そこから見て行くことにしました。おーいるいる。すごく所在無さそうな様子でいる(笑)

「nivadagrenchen(ニバダ・グレンヒェン)」さんのブース

 「ニバダ・グレンヒェン」の仕切りはお馴染みの「H°M’S” WatchStore」さん。「タイムユナイテッドっていう時計イベントがあるよ~」と伝えたら、ニバダ側から「ウチも出たいよ~」とラブコールがあったそうで(笑)

 人の顔を見るなり「商談ごっこしましょう!!」と言われて席に着き、「コレでしょ!!」と差し出されたのが、ニバダ・グレンヒェンの「F77 METEORITE MK2 – 41MM」でした。うん確かに、F77メカクォーツの記事を書いた際に気になって、これの実物を見たいとお願いしていました。

F77 METEORITE MK2 – 41MM

ニバダ・グレンヒェンのF77 METEORITE MK2 - 41MM、メテオライト文字盤の腕時計 タイムユナイテッド 東京 2026

 38MMモデルから受けるイメージが「ノスタルジー」だとすれば、41MMのF77は「先進」かもしれません。サイズアップしたことで細部のバランスが変化しているので〝3ミリ大きいF77〟と軽々しくは呼べない別種の存在感を醸していました。

 大型化したことで、より細部の仕上げに注目される時計になったと思いますが、むしろ仕上げの潜在的な実力が目立つようになりました。そうか… F77ってこんなに美肌だったのか… (*´ω`*)

DEPTHMASTER – 42MM

Nivada GrenchenのDEPTHMASTER 42MM。黒文字盤に黄色のインデックスと針、赤いベゼル目盛りのダイバーズウォッチ タイムユナイテッド 東京 2026

 ですが、それ以上に私の魂とおサイフに手を突っ込んできたのが、こちらの「ART DECO DEPTHMASTER – 42MM(デプスマスター 42MM)」。海外では〝リトルパネライ〟なんて可愛らしい異名で呼ばれる「デプスマスター」ですが、こちらも39ミリから〝3ミリ〟サイズアップしたことで、今までの小動物のような愛らしさから〝男のツール〟としての力強さを手に入れました。

 私はこれにどハマリしまして(笑) パックマン風インデックスの楽しさと握りこぶしのような重量感に惚れてしまいました。次のポイントアップイベント… いつだっけ??

「BALL Watch(ボール ウォッチ)」さんのブース

 この日、特に印象的だったのが「ボール ウォッチ」さんでした。ブースで応対して下さった面々が面白過ぎたのもありますが(笑)

 〝見た目のインパクト〟で言えば、世界屈指のラインナップを誇る「ボール ウォッチ」。それ故に〝好きと苦手〟がハッキリ分かれるブランドかもしれません。

 まず一番手として拝見したのが「NEDU G5(ネドゥ G5)」。ちなみにこの後、何故か全ての時計を「マクドナルドのメニュー」で例え始めたブースの面々… と私(笑)

NEDU G5

NEDU G5 BALL Watchの青いベゼルの大型クロノグラフを腕に着けた様子 タイムユナイテッド 東京 2026

 そうして〝ビッグマック〟に例えられた44ミリ幅の「ネドゥ G5」でしたが、実際に腕に載せた私は即座に訂正を挟みました。「夜マックで倍にしたビックマックですよ。コレ!!」

 ハイドロカーボン使いだった私にとっては〝さもあらん〟なのですが、初めてボール ウォッチを着けた方は〝一種の戸惑い〟を覚えるはずです。

 この「ネドゥ G5」の場合はまず〝デカい印象〟が来ます。そして数秒後、恐らくはこう感じ始めるはずです。「デカいけど… キレイだ」と。

 これはボール ウォッチの「全モデルに共通した評価」ではないかと思います。無骨方面のデザインであっても、仕上げや作り自体は宝飾のように繊細なのです。ちなみにグレード5チタン製のケースにグレード2チタン製のブレスレットですので、見た目ほど重くありませんでした。

Engineer Hydrocarbon ORIGINAL

BALLのダイバーズウォッチを着けた腕元の写真 タイムユナイテッド 東京 2026 Engineer Hydrocarbon ORIGINAL

 ハイドロカーボンシリーズの中では比較的〝優男顔〟「エンジニア ハイドロカーボン オリジナル」。ステンレスケースにステンレスブレスなので、ズシリと来る重量感です。ケース径は42.85ミリ。こちらは「サムライマック」の異名で呼ばれていました。ってか、私が勝手に言ってました(笑)

 これもデカいんですよ。なのに美しい。上品なサファイアカバードベゼルが、袖口でとんでもない色気を放っていました。実は随分前から好きなモデルだったりします。

Engineer MARVELIGHT CHRONOMETER 40 METEORITE

Engineer MARVELIGHT CHRONOMETER 40 METEORITE BALLのメテオライト文字盤の腕時計。虹色のインデックスと日付表示付き タイムユナイテッド 東京 2026

 そして〝ボール ウォッチのチーズバーガー〟こと「エンジニア マーベライト クロノメーター 40 メテオライト」です。〝これぞボール ウォッチ〟とでも言うべき、マイクロ・ガスライトの虹が可愛らしいモデルでした。ちなみに36ミリサイズもあるそうです。

 ケース素材は「904Lステンレス」です。ロレックスでは「オイスタースチール」と呼ばれる工業用グレードの最高峰。

 と、色々見せていただきましたが、目立つ異形に惑わされずに見るボール ウォッチは、改めて相当に繊細で美麗な時計を作るブランドだと思いました。男心に刺さる時計の多いこと!! 早くもお腹いっぱいですがな(笑)

「Vicenterra(ヴィセンテラ)」さんのブース

 ワタクシにとって初めてのブランド「ヴィセンテラ」です。ちなみにWebで調べてもメディア記事の類いは出て来ませんでした。これから評価されていくブランドさんです。

 ヴィンセンテラは「ヴァンサン・プロン(Vincent Plomb)」という方が創立したブランドだそうです。土木工学からファッション、そして時計の世界へ… 面白い経歴をお持ちの独立時計師さんですね。

 独自のコンプリケーションを得意とする職人気質な一方、サブスクリプション(予約注文)を利用した最新のビジネスモデルを取り入れるなど、今風のブランドでもあります。書き手として体裁を整えるなら「以前から注目していた」と書くべきところですが、私には未知のブランドさんでした。不明を恥じるばかりです (;´∀`)

AstroLUNA Opal 

AstroLUNA Opal オパールのモザイク文字盤を持つ、地球と月のオブジェクト付き腕時計 タイムユナイテッド 東京 2026

 〝夢かわいい〟とはこのことかもしれません。混雑していたのでじっくりと拝見できたわけではありませんが、私が拝見したコレクションの全体的な印象を言葉にするなら… それは「詩」だと思います。

 中でも「AstroLUNA Opal」は印象的でした。まるでクリムトの絵画のように配色されたモザイクダイヤルの美しさ。夢見るような色の奔流が浮き立たせる針の存在感… 職人の手作業で彩色された地球と月のオブジェクト。

 ケース内部を大胆な浮遊空間に変える構造体が、ダイヤルやその他のモチーフに得も言われぬ詩的な役割を与えていました。これは時計という名の「絵本」です。

 目の前の全てのモデルを俯瞰し終わったとき、そこには「ヴィセンテラ全集」とも言うべき〝雄大な詩の世界〟が現れました。手にした方は幸せでしょうね (*´ω`*)

AstroLUNA Classic T1 Aventurine

AstroLUNA Classic T1 Aventurineの腕時計。アベンチュリン文字盤に天体モチーフを配したモデル タイムユナイテッド 東京 2026

 腕時計において、アベンチュリンほど〝宇宙のイメージ〟を体現できる素材はありません。これまでにも多くの時計が、例え天文と無関係な時計であっても、アベンチュリン素材でダイヤルに夜空を閉じ込めてきました。私も好きなダイヤル素材です。

 オフセットされたダイヤルと天体オブジェクトのバランスがすこぶる良い「AstroLUNA Classic T1 Aventurine」です。

 オフセット文字盤を〝苦手〟と仰る方は少なくありませんが、その理由として上げられることの多い〝重心の曖昧さ〟をまるで感じませんでした。意図的な重心がセンター領域に感じられるため、一般的な時計と同じ感覚で着けられると思います。

 この辺りの拘りは、土木工学にルーツを持つヴァンサン・プロン氏ならではかもしれませんね。

「Lundis Bleus(ランディ・ブルー)」さんのブース

 ラ・ショードフォンの時計学校で出会ったヨハン・ストーニ氏とバスティアン・ヴィリオメネ氏が設立したブランド「ランディ・ブルー」〝憂鬱な月曜日〟と名付けられた若きブランドは2016年にファーストモデル「Ref.1100」を発表。その後も極めてユニークな文字盤で耳目を集める新作をリリースし続けています。

 個人的にも欲しいモデルが数本あるブランドさんです (*´∀`*)

Sea of Japan

ランディ・ブルーの地図モチーフの腕時計2本 Sea of Japan タイムユナイテッド 東京 2026

 中央の地図は七宝でしょうか。輪郭線が見えるので有線七宝… クロワゾネってヤツかもしれません。クロワゾネかぁ… 時計好きの夢ですな。

 「Sea of Japan」はこのダイヤルだけでも贅沢で見栄えがしますし、何なら使わずに飾っておきたくなるような時計ですが、執拗に刻まれたミニッツトラックがそれを許さないでしょう。インデックスや針の造形を見ても、この時計は明らかに「使ってナンボ」の設計です。

Milky mel

Milky mel ランディ・ブルーの淡いピンクの文字盤の腕時計 タイムユナイテッド 東京 2026

 公式のどこにも情報が見当たらなかったので、ネットの海を泳いでモデル名を特定させていただきましたが、自信が無いので関係者の皆さまの訂正をお待ちしております(笑)

 このモデルはとにかくダイヤルが凄まじかった。角度による上品な色変化が素晴らしく、針とインデックスを含めた明確なコンセプトにもドキドキしました。どこにでもある造形なのに、見たことのない一本にしか見えない… 実は一番難しい方向性の時計を作っている「ランディ・ブルー」さんかもしれません。

「MeisterSinger(マイスタージンガ―)」さんのブース

 何故か最近、アチコチで着けている人を見るようになった「マイスタージンガー」の時計。来てるのか… すぐそこに、一本針の時代が!? (@_@;)

Kaenos – Sunburst Petrol

Kaenos - Sunburst Petrol マイスタージンガーの一本針腕時計「Kaenos」の青い文字盤モデル タイムユナイテッド 東京 2026

 ラグジュアリースポーツ風の一本針「Kaenos」です。いやいや、ラグスポなんて通り一遍の文脈で括ったら失礼です。それくらい、マイスタージンガ―さんの「一本針スタイル」は強い。どんなアウトラインで纏められようとも「マイスタージンガ―であることの個性」の方が、それらを遥かに超越しています。

 40ミリケースの目一杯まで広がったダイヤルで絶対的な存在感を示し続ける針。この「情報の導線がたった一つ」という潔さにやられてしまった男たちが、マイスタージンガ―の扉をこじ開けて、自ら進んで「一本針の民」になるのでしょう。

Pangaea Day Date

マイスタージンガーの一本針時計「Pangaea Day Date」 ホワイトラッカー ダイヤル タイムユナイテッド 東京 2026

 「確かにな」「Pangaea Day Date」を拝見した私は、そう思うしかありませんでした。

 一般的なデイデイト窓を付けてしまったら、このモデルはその最たる意味を消失します。このモデルにおいて、インデックス、ミニッツトラックを除けば唯一、円環を横断して良い要素が「針」。ここに横並びのデイデイトなんて付けた日にゃ…「Pangaea Day Date 最大の魅力」はスポイルされていたでしょう。

 一本針だからこそ成立するバランスと、アナログ式クッキングスケールのような懐かしさ。それでも奇をてらっているように見えないのは、この時計が「マイスタージンガ―」だからです。

「DENNISON(デニソン)」さんのブース

 腕時計好きにとって特別な響きを持つ「デニソンケース」。名だたるブランドに採用され、確固たる一時代を築いた伝説のケースメーカーをルーツに生まれたのが、復刻ブランド「Dennison Watch Co.」です。

 1960年代にデニソンが築き上げた世界観のままに、現代の解釈を加えて構築された「デニソン」の現ラインナップ。ケースメーカーが時計のデザインを決めていた時代に、そのトップランナーだった「デニソン」の卓越したセンスが蘇ってくるようです。実際、クラシカルな中に未来への視野を感じる、野心的なモデルが揃っています (*´ω`*)

Turquoise & Falcon Eye Stone In Steel

Turquoise & Falcon Eye Stone In Steel ターコイズとダークブルーの石文字盤を持つデニソンのデュアルタイム腕時計  タイムユナイテッド 東京 2026

 ここでは2つの時刻を表示する「デュアルタイム」の2本をご紹介したいと思います。

 デュアルタイムというだけでも相当なキレっぷりですが、このダイヤルのセンスたるや… これは時計のデザインを超えています。このまま大きく引き伸ばしてタペストリーにしたいくらい。「Turquoise & Falcon Eye Stone In Steel」はホント、これはアートです。色のチョイスも抜群。

 シンプルで誤魔化しの効かないTVスクリーン型のケースは、デザイン的な完成度の高さも去ることながら、誠に素晴らしい仕上げでした。

ALD Dual Time “SHADES”

ALD Dual Time “SHADES” デニソンの緑色ダイヤルの腕時計を手に持った写真 タイムユナイテッド 東京 2026

 続いて新作のデュアルタイムです。

 「SHADES(色合い)」と名付けられたこのモデル。濃度差のある同系色が並んだダイヤルに見えますが、実はこれ、全く同じ色なんです。ダイヤル表面のテクスチャー、縦横の筋目が光線の屈折方向を変えることで、これだけニュアンスの違う色合いを感じさせてくれます。

 ケースの立体感を強調するために同様の仕上げが施されることがありますが、ダイヤルの色合いを変えるためにというのは、かなり珍しいと思います。

 ダイヤルの角度、光線の方角で千変万化するダイヤルの表情。まるで生き物のようでした。

「Mühle Glashütte(ミューレ・グラスヒュッテ)」さんのブース

ミューレ・グラスヒュッテの腕時計が並ぶブース展示 タイムユナイテッド 東京 2026

 1869年にドイツ・グラスヒュッテで創業した老舗ブランド「ミューレ・グラスヒュッテ」。ドイツブランドの例に漏れず、数々の歴史の試練に耐えて今に至る、骨太な時計作りで知られています (*´∀`*)

Teutonia IV Big Date Edition 1994

ミューレ・グラスヒュッテのTeutonia IV Big Date、31日表示のビッグデイト付き腕時計 シルバー サンレイ ダイヤル タイムユナイテッド 東京 2026

 グラスヒュッテと言えば「ビッグデイト」を忘れてはいけません。「Teutonia IV Big Date Edition 1994」にはCal.MU9424-GD(41時間パワーリザーブ)が搭載されていますが、ビッグデイト機構に関しては追加されたカスタムモジュールで実現しています。

 サンレイのシンプルなダイヤルとこれまたシンプルな針、そしてインデックス。華美を嫌うドイツ時計の傾向に則った上で、ビッグデイトの存在感が独特の存在感を放っています。独特の少し危うげなデザインバランスが、如何にも「ドイツ」って感じです (*´∀`*)

ミューレ・グラスヒュッテのTeutonia IV Big Date、31日表示のビッグデイト付き腕時計 グレー ダイヤル タイムユナイテッド 東京 2026

 こちらはダイヤル違いのモデル。う~ん… これは良いぞ!!

 オメガ得意のチークコンセプトダイヤルに似ていますが、とても上品なトーンで輝きを放っていました。改めて「ミューレ・グラスヒュッテ」さんの魅力は、繊細さと力強さを橋渡しする〝独特な間合い〟の中にあると感じ入りました。落ち着いた場所で、今度ゆっくり見てみたいですね。

「Tutima Glashütte(チュチマ)」さんのブース

 こちらも様々な荒波を乗り越えて今に至る、グラスヒュッテの時計ブランド「チュチマ」さんです。正式に「TUTIMA(チュチマ)ブランド」を名乗ったのが1983年、ドイツ連邦軍の制式クロノグラフに採用されるなど、その基本性能と開発力を高く評価されています。

 チュチマさん(思わずさん付けで呼びたくなる語呂です)で面白いのは、時計製造の聖地グラスヒュッテで誕生したブランドにも関わらず、西ドイツに本拠を構えていたころの記憶が残っているところです。故に「東ドイツと西ドイツ」… 双方の特徴を幅広く持ったラインナップを見ることができます。

COAST LINE

COAST LINE チュチマの丸型腕時計。黒文字盤に曜日・日付表示、赤い秒針、ステンレスブレスレット付き タイムユナイテッド 東京 2026

 トノーシェイプのケースに質実剛健なドイツの顔立ちを持った「COAST LINE」。紛うことなきツールウォッチでありながら、同時に優美さを感じさせるという、チュチマの性格を現した時計です。

 防水性は30気圧。ケースとブレスレットは「グレード2チタン」製です。ケース幅は43ミリもありますが、近くで見てもそれほど大きいとは思いませんでした。ケースだけが目立つわけではない、ブレスレット一体型思想の時計だからでしょう。

 このカタマリ感… 実際、私の〝好き〟のど真ん中です (*´∀`*)

Patria Light Blue

Patria Light Blue チュチマのライトブルー文字盤の腕時計を手に持っている写真 手巻き 自社ムーブメント タイムユナイテッド 東京 2026

 照明の加減でダイヤルの青さが飛んでしまいましたが… この「Patria Light Blue」はヤバかったです。何を聞かれてもヤバいとしか表現できない、語彙を失わせる何かがありました。

 まずはダイヤル。精緻なギョーシェが陰影を成す鮮やかなライトブルーは確かに最高でしたが、私はこの「主張するスモールセコンド」に一票を投じたい気持ちです。こういったクラシカルなバランスが「Patria Light Blue」には良く似合います。

 41ミリと僅かに大きめのケースサイズですが、充実した顔立ちなので全く気になりません。裏も見たいですよね?? そうでしょうとも!!

Patria Light Blue チュチマのライトブルー文字盤の腕時計を手に持っている写真 手巻き 自社ムーブメント  4分の3プレート グラスヒュッテ タイムユナイテッド 東京 2026

 搭載されているムーブメントは手巻き式「チュチマ617」。パワーリザーブは65時間以上です。何よりもこの受け板「4分の3プレート」の雄大さ。そして「グラスヒュッテ式コハゼ」。シャトンもこれ、しっかり入っています。

 140万円近いお値段にはなってしまいますが、グラスヒュッテのマニュファクチュールなら破格と言えないことありません。

「STURMANSKIE(シュトゥルマンスキー)」さんのブース

シュトゥルマンスキーのブース看板と、宇宙飛行士の写真が写った展示パネル タイムユナイテッド 東京 2026

 モスクワ第1時計工場をルーツに持つ「シュトゥルマンスキー」。ボストーク1号で人類初の宇宙飛行を行ったユーリイ・ガガーリン氏が着けていたことで、今もその偉業とともに語られるブランドです。

GAGARIN HERITAGE ONE

GAGARIN HERITAGE ONE シュトゥルマンスキーのガガーリン・ヘリテージ・ワン、クリーム色の文字盤の腕時計 タイムユナイテッド 東京 2026

 こちらはガガーリン氏の名を冠した「GAGARIN HERITAGE ONE」。シュトゥルマンスキーさんの中で最もオリジナルのデザインに近いと言われています。この時代感!! 書体も独特で可愛い (*´ω`*)

 40ミリ幅のケースにCal.2609手巻きムーブメントを搭載。風防は… ミネラルガラスだ!! やったぜ!!(笑)

 そもそもロシアの近世デザインって、面白い育ち方をしているのですよ。まず、近代化とともにアール・ヌーヴォーが急激に古臭くなって、その過剰な装飾を捨て直線的・幾何学的へと移行したのがドイツ・オーストリアのデザイン。大雑把に言えばその最たるものがバウハウス運動です。

 そしてバウハウス運動にみる「目的を持った簡潔なデザイン」は、同時期のロシア構成主義と激しく共鳴し合いました。そうして、ロシア革命を契機に〝政治色をデザインに落とし込むという〟独特の発展が、多くの「ロシア・アヴァンギャルド」を生み出したという経緯があります。

 芸術家ではなく、社会に奉仕する『生産者』が生み出したロシアデザインの数々…「GAGARIN HERITAGE ONE」が今なお守り続けている古臭さには、こうした歴史の必然が垣間見えるのです。

OPEN SPACE GMT

OPEN SPACE GMT シュトゥルマンスキーのローズゴールドケース腕時計、緑の文字盤に24時間表示付き タイムユナイテッド 東京 2026

 ロースゴールドPVDのケースとブレスが色気たっぷりの「OPEN SPACE GMT」。42ミリ幅のケースは確かに少し大ぶりですが、ダイヤルの要素もギューギューに詰まっていますし、無駄にデカい印象は皆無でした。

 ムーブメントは第2時間帯を示す24時間針が追加された「NH34」。基本性能はお馴染みのNH35と変わりません。昨今珍しいギラギラしたデザインが、どことなく心に残っている「OPEN SPACE GMT」でした。9万9000円かぁ… 悩むなぁ~ (;´∀`)

「VOSTOK EUROPE(ボストーク ヨーロッパ)」さんのブース

VOSTOK EUROPEの派手な腕時計が並ぶ展示ブース タイムユナイテッド 東京 2026

 「ボストーク ヨーロッパ」はリトアニアの首都ヴィリニュスで誕生した独立系時計ブランドです。かつてはロシア・ボストーク社からのムーブメント提供などもありましたが、現在は主に日本製のムーブメントを搭載した、欧州向けの時計を製造しています。

 特筆すべきはこの「振り切ったデザイン」です。

 何という〝兄貴系〟!! 全ての時計が白い歯を見せて「黙ってオレについて来い!!」と手招きしているかのようでした。ケース径も47ミリ級がゴロゴロしていますので、時計の大きさに負けない、パンプアップした上半身との相性が良さそうです。

 最近の流行からすればかなりアウトローな見た目ですが、セイコーエプソンのソーラームーブメントを搭載していたり、20や30気圧の時計がゴロゴロしていたりで、実使用面での性能は折り紙付き。

 175センチで80キロ近い体重の私でも少し躊躇を感じますが、着けこなせる方であれば、その目立ち方は他の追従を許さないレベルになるでしょう。デカ厚のパネライが良いところのお坊ちゃんに見えるはずです(笑)

Expedition North Pole

Expedition North Pole ライムグリーンのベゼルが目を引く、ボストーク・ヨーロッパのクロノグラフ腕時計 ソーラー セイコーエプソン VR42 タイムユナイテッド 東京 2026

 色々と見せていただいた中で、ジワジワと欲しくなってしまったのがセイコー エプソン製「VR42」を搭載したソーラーパワークロノグラフ「Expedition North Pole」でした。ライムグリーンの見返しが強烈な主張を感じさせますが、書体の選択やインデックスの表現は意外にもオーソドックス。何気に散らかっていないのは、その辺りの引き算によるものでしょう。一周回ってハイセンスなのかも!!

 47ミリ幅のデカさは伊達じゃありません。クロノグラフでありながら200メートルの防水性能を備え、巨大な風防は耐衝撃性に優れた「K1クリスタルガラス」。これならば、どんなに激しいアクティビティーにも応えてくれるはずです。

「タイムユナイテッド 2026 訪問記・前編」はここまで!!

 「ドレス」「ラグスポ」といったモデルタイプ、或いは「価格帯によるレンジ分け」などの分類は、時計を報じる側には便利な言い回しに違いありません。

 しかしながら日々進化したい、実際に進化を遂げようとしているブランドにとっては、外向きの評価を固定化しかねない足枷でしかありません。清純派のレッテルを貼られた女優さんだって本当は色んな役柄に挑戦したいはずなのに、その後の脱皮に苦労するじゃないですか… (;´Д`)

 ですので今回のレポートでは、そういった分類の類は一切考慮せず、私自身が見て回った順番のみで書かせていただきました。

 この日もアチコチのブースで、一般ユーザーとの活発な商談が行われていました。そんなわけで、慌ただしい様子のブランドさんの中には、時間内にお声がけできなかったところもあります。どうにかしてコンプリートしたかったですけどねぇ。

 結局、お話を伺って写真の撮らせていただけたのは、出展数の半分「20のブランド」さんが限界でした。ここがワンオペの悲しさ。半分回った時点(時間にして僅か3時間ほど)で、私の膝と腰は情けない悲鳴を上げていました(泣)

 それでも結構な数のブランドさんに関して、貴重な情報を得ることができたと思います。

 私にとってお馴染みのブランドであれば、得られる情報は常に最新の鮮度です。反面、知ってはいるけれどたまにしか実機を拝見できないブランドさんに関しては、残念ながらその限りではありません。この日はそういったブランドさんの情報を〝差分〟として受け取ることができました。

 旧知の代理店さんや、腕時計喫茶を読んで下さっているブランドさんからは、前日のメディアの日に渡したであろう「メディアキット」をそのまま頂戴したりもしました。これは後日、別の機会に活かしたいと思います。

 というわけで、今回は「タイムユナイテッド 2026 訪問記・前編」として、10ブランドを取り上げました。「後編」〝6月に入ってから〟お届けする予定です。注目度の高いニューモデルの情報解禁が設定されているので、そこに合わせたいと思います。

買ったからこそ書ける記事がある…

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About the Author

砂布巾のアバター 砂布巾 主筆・主宰

 腕時計喫茶で主宰・主筆を務めます砂布巾(すなふきん)と申します。

 一般報道機関で働く傍ら、好きな腕時計のことを自由に発信できる場所として2017年12月、サイト「腕時計喫茶」を立ち上げました。

 以来、腕時計趣味を盛り上げるモチベーター、魅力を伝えるキュレーターを自認しつつ、腕時計にちなんだエッセーを書き続けています。

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