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初期には一時的な耳目を集めるための客寄せ企画として「懐かしい一本」を限定的に発売する手法が多かったように思います。特に、現代的なラインアップで評価の高いブランドから、広く注目される以前のクラシカルなモデルが復刻された場合のインパクトは、決して小さくありません。 そもそも、ブランドが安定的に利益を上げ続けるためには、その土台を下支えしてくれる多数の「支持者」が必要です。勢いに乗ってブランドを浸透させる「布教活動」が上手く行っている間は良いのです。ですが、どんな蜜月も永遠に続きはしないものでして(;´Д`) そんな「腕時計ブランド」と「支持者」の間に忍び寄る不協和音。「倦怠期」とも言うべき危機の前兆に対して、本来なら「スカッと目の覚めるような新機軸」を打ち出すのが最善の策なのは間違いありません。 腕時計以外で例えるなら…最近の「アップル社」が良い例です。あれだけ世界的な話題を振りまいて、あれだけ先進的な製品を生み出してきた会社が、今まさに。明らかな悩みの縁にいるような気がするのです。 アップル社の良いところは「成功に固執しない」姿勢だったと思います。それは「Macintosh(Mac)」の歴史を見れば一目瞭然。軌道に乗っているプロジェクトをあっさり手放し、信者さえも混乱させるほどの方針転換を何度も行ってきた「Mac」。古参のユーザーを「このまま付いて行っていいのか??」と動揺させる都度、予想の斜め上から新製品が降ってくる…ダイナミックでドラマティックな展開に期待して、アップル製品を買い続けるファンは大勢いたと思います(私もね!!) ところが…どうです??最近のアップル社絡みのニュースで「おぉ!!」と感嘆したのは「Mシリーズプロセッサ」の登場くらいですよ(´;ω;`) それにしても…一体いつまで「iPhone」なのでしょうかねぇ??(;´Д`) このままだと、目新しさも何もない「iPhone20」とか「iPhone30」が店頭に並んでしまいそうです(価格だけは確実に上がるでしょうけどね!!) 少なくとも、懐かしい「PowerPC」時代のアップル社なら、とっくの昔に全く新しい「iPhoneに変わる何か」を出していたはずです。それは旧来のユーザーの期待を鮮やかに裏切る反面、新しい支持者を獲得するきっかけになったことでしょう。アップル社のようなヒッピー文化から生まれたアウトサイダーに私が求めるのは、成功と失敗を等しく天秤にかけたギャンブル…ビックリ箱のようなイノベーションなのです。 で「ぐりんっ」と話は腕時計に戻ります。 アップル社のようなテクノロジー企業では難しいと思いますが、腕時計業界なら消費者の目先を変える最適解として「復刻」は非常に有効です。過去のアーカイブを元に失敗のリスクを最小限に抑えることができるのですから「どうも最近ノリが悪いなぁ~」と感じたブランドが「復刻行っとくか!!」となるのは理解できます。 ですが…「復刻」の乱用は腕時計ブランドにとって、緩やかに生気を失わせる「劇薬」かもしれないと考えることがあります。 私自身は「復刻もの」がもたらす「優しさ」が大好きです。それは誰にとっても消化の良い「伊勢うどん」みたいなものかもしれません。 確かに柔らかく食べやすい…そんな伊勢うどんみたいな時計が大好きだと仰る方、世界中にいらっしゃると思います。 腕時計で言う「食べやすさ」とは、言い換えれば「評価で迷う必要がない」ということです。とうの昔に良いも悪いも出尽くしているワケですから、現代の技術でリプロダクトされたとしても本質的な評価が揺らぐことはないでしょう。食べ慣れない料理でお腹を壊す…みたいなこともないはずです。 だからこそ「安心して購入」できるし「安心して身に着ける」ことが可能なのです。 でもですね…伊勢うどんって、ホンマに歯ごたえないんですよ。煮込みすぎてくったくたですから。機会があったらシャキシャキのネギと一緒にお召し上がり下さい(お伊勢さんで食べると何故か異様にウマいですから) いやまぁ…伊勢うどんは良いとして(笑)これはあくまで私個人の感想ですが…「復刻もの」って何となく「飽きるのが早いのでは??」と思っています。 徹底的に当時のスタイルに拘って作られた「ほぼ完全な復刻」は、発表される都度話題をさらいますし、愛好家を狂喜乱舞させる存在です。オリジナルと復刻を比較して、その高い再現度を検証する企画は、腕時計専門誌が得意とするところでしょう。実際「クリソツ」であることは、そのまま価格にも如実に反映されるようです。 ただ…余りに執拗に「復刻!!復刻!!」と押しまくられると、些か食傷気味…先述のiPhoneのように「もうええわ!!」と言いたくなってきます。 復刻の乱用を「劇薬」と称したのにはワケがあります。どれほど濃密な歴史を誇るブランドであっても、過去をほじくり返す企画には限界があって、その限界点の把握を見誤った場合、消費者の目には「相も変わらず似たよう時計しか作らん(作れん)ブランドやなぁ」と映り始めるのです。停滞、零落、低迷…過剰な復刻ものの展開は、そのようなマイナスイメージを体内毒素のように溜め混んでしまう危険性があるのです。 折角苦労して過去の資料を研究し、現代の技術で確実にアップグレードした「復刻」を完成させても、消費者に一種の「セルフパロディー」と受け取られ「そういうのは飽きたから」なんて言われたら…きっついでしょ?? 要するに「復刻ものも程々にね!!」と言うのが、私の個人的な意見なのですが、それもこれも私の「本質的には枯れた(見た目の)時計に惹かれる」性質ゆえ。復刻は「ここ一番」の方が良いんじゃないかなぁ~って思うわけです。老婆心ながら(;´∀`) 復刻ものの良いところは、そのまま弱点でもあります。とっくの昔に評価が固まっているスタイルなワケですから、購入者が時間をかけて「評価を下す」楽しみが欠けるんですよね(;´∀`) 新機軸の腕時計を目の当たりにした際の「ぐらぐらと揺らぐ気持ち」…数分の間に起きる感情の機微を経て大枚を叩く決意を固めるまでの時間こそ、腕時計から最初に受け取る「後々まで心に残るエクスペリエンス」だと思うのです。 時代を超えて消費者に支持され続けるブランドに必要なのは、復刻ものがもたらす「安心」と、新しさを感じる野心的なプロダクトが与えてくれる「刺激」。そしてそれらをバランスよく配するセンスではないか…個人的にはそんな風に考えています。 その視点でいえば、オリスの2022年新作「プロパイロットX キャリバー400」はちょっとした驚きでした。元々オリスさんはラインアップのバランスが絶妙なブランドだと思いますが、その中にあっても、この「プロパイロットX キャリバー400」は、オリスさんの「野心が詰まった」モデルなのではないかと。
(01 400 7778 7158-07 7 20 01TLC)出典:https://www.oris.ch/jp/
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(グレーダイヤル)出典:https://www.oris.ch/jp/
(Oris Cal. 400)出典:https://www.oris.ch/jp/



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