
弊ブログの記事の中で、最も長きに渡りご支持いただいたのはセイコーメカニカル「sarb033と035」に関するものでした。
何度も価格高騰と下落を繰り返したことで有名な時計ですが、その時代を超越した不変的なスタイルから、日本人の腕時計好きの皆さんに「いつまでも手元に置いておきたい!!」と思わせる筆頭のような時計だったと思います。
私のところにも「ブログに背中を押されて買っちゃいました!!」という報告を沢山いただきました。嘘偽りなく、過剰な推しもなく、私が使って感じたことをレポートさせていただいただけの駄文でしたが、それでも多くの方に読んでいただき、続報も沢山書いたりして… 私の中で「sarb033と035」に関するネタが最も重要なコンテンツだったのは間違いありません。
今思えば、それは間違いなく私と腕時計との蜜月でした (´;ω;`)
「6R」だからこその価値
「033と035」に対する評価は人それぞれだと思いますが、キャリバー「6R15」を搭載しているというのは大きかったと思います。「4R」もじわじわバージョンアップして、なかなかに良いキャリバーになったと思いますが、同格のものが格安の自動巻きにも載ってたりして、少なくとも腕時計が好きな諸兄にとっては、真に心躍らせるムーブメントでは無いと思います。
そこに行くと「6R」はどこの馬の骨的な安価な腕時計に積まれていることはないですし、あるレベル以上のステータスを感じさせるムーブメントだと言えるでしょう。
4Rと比べて僅かですが日差は優勢ですし、何よりリューズから伝わる挙動に「高級感」があります。具体的に「何が」とはお伝えしづらいのですが、巻き込んでいった時に指に伝わる情報が正確なのです。私の手持ちで言うと、ミルガウスを巻いた時と6Rを巻いた際にフィードバックされる感触はほとんど変わりません。つまり、それくらいの「良いもの」なのです。
「6R」の〝玉突き出世〟
4Rでもそれなり…と申しますか、十分な性能があると思います。10万円近い腕時計の中に入っていてもさほど恥ずかしいムーブメントではありません。何より滅多なことでは壊れないのが素晴らしい。
となると「6R」の立ち位置がいささか〝微妙〟になってしまいます。人間の組織に例えれば、下の世代が育ってきて上の世代が「玉突き出世」することが稀にありますが、まさにそれです。「6R」は〝玉突き出世で偉いさんになってしまった〟のです。
上役に相応しい実績がないかと言えばそんなことはありませんが、10万円クラスで戦えるムーブメントかと言われたら、スイス辺りのライバルと比較した際のスペックは些か淋しいと言わざるを得ません。
「SARB033」と「035」… 安かった頃の記憶を辿ると??

現在「6R搭載」のセイコー自動巻きは、6万から8万円辺りにラインアップされています。フツーの勤め人である私には、購入判断に気合いを要する… そうそう気安く買えないお値段です。

現在、当の「033と035」はどうなったかと言いますと、在庫が底を尽きかけてるという状況もあるでしょうが、6万半ばから8万円といった価格で取引されています。いやぁ…さすがにお高い。
「6R搭載品」という括りで見れば、現在の平均価格帯はそんなものですし納得するしかありませんが、安かった頃を記憶している者からすればやはり…厳しいなぁと思います (;´Д`)
過去を振り返らずに見る「SARB」
ただ、安かった頃を知らなかったとしたらどうだろう…と自問したとき、もしそれが「sarb033&035」に対する初見だった場合、私は納得して買っちゃうかも知れません。というのも、現在の「6R搭載品」を俯瞰してみたとき、最新のモデルと比較しても「033と035の方が断然好み」だからです。新品で買える全てのセイコーを引き合いに出してきたとしても「033と035」の格好良さは格別。現代のセイコーのイデアを完璧に体現していると言っても、言い過ぎではないでしょう。
そんな「033と035」が、3万円台半ばで買えていた幸せな季節は過ぎ去ってしまいました。Amazonさんですらメチャクチャ高騰してしまった事実を前にすると、たかが腕時計の価格の話なのに、何だかものすご~く悲しい気持ちになってしまいます。例え、その価格に見合った価値のある腕時計だったとしても…です。
知る人ぞ知る〝安価な名機〟として記憶されるであろう「SARB」
きっかけは定かではありません。ただ、明確に安く提供されていた期間、謂わば「SARB激安祭」なるものがAmazonで繰り広げられていたことは事実です。「貧者のグランドセイコー」というワードが飛び交うコメント欄は、狂騒気味の熱で満たされていました。
今思えばそれも当然のこと。あの時代でさえ、今より遥かに時計が安価だったあの時代でさえ、腕時計愛好家の「SARB033、035」に対する認識は「安過ぎる!!」でした。もう二度と、こんなにも愛される「低価格機械式セイコー」は現れないかもしれません。SARBを手に取るたび〝あの頃が華だった〟としんみりしてしまうのも、ある意味、無理からぬことです。
私の好きな詩人、ウィリアム・ワーズワースの詩にこんな一遍があります。
「かつてのあの眩い煌めきが、今や永遠に失われても、たとえ二度と戻らなくても、あの草原の輝きや、草花の栄光が還らなくても嘆くのはよそう、残されたものの中に力を見出すのだ」
とうに過ぎ去ったSARBとの蜜月は良い思い出として、これからは今のセイコーに存在する素晴らしい腕時計と、これから登場する素晴らしい腕時計の中に価値を見出していけば、満ち足りた腕時計ライフを送れるかも知れませんね (*´∀`*)









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