「全部が全部格好良いですね!!」… これはある日の松下代表(松下庵)が、とある時計ブランドについて評した言葉ですが、どこに対する評価か… 気になりますよね??
ストラップ製作の現場で数限りない時計に接してきた松下代表にしてそう言わしめる、玄人好みのブランドとは??
ハズレなしのラインナップ

そのブランドこそ皆さまご存知、実業家ギヨーム・ライデ氏による再興で輝きを取り戻した「ニバダ・グレンヒェン」でございます。
それを聞いた瞬間、「言われてみればそうかも!!」みたいな感想を持ったワタクシ。思えばことあるごとに(無理して)買っているブランドですし、個人的な部分で馴染みになり過ぎたのかもしれません。ですので、松下さんが漏らした素直な感激に、ブランドに初めて触れたときの新鮮な気持ちが蘇りました。
確かに、再興を果たしてからのニバダ・グレンヒェンが構築してきたラインナップを見れば一目瞭然です。どのモデルにも〝適当に流した〟ようなところが一切なく、「ラインナップの体裁を整えるために作りましたよ~ 」みたいに浮ついたモデルは、ただの一本も存在しません。見渡せど見渡せど、無視できない時計が目白押し。
低価格帯のモデルであっても、半端なく気合いが入っています。細部に至るまでの完成度がとにかく高く、それが全体的な〝カタマリとしての存在感〟を押し上げているのです。
ぶっちゃけ小規模ブランドですし、生産本数から言って簡単には入手できないモデルも存在します。日本総代理店の「HºM’S” WatchStore」さんにしても、常時全てを揃えているわけではありませんが、それでも、限定モデルでもない限り待っていれば再生産で手に入るケースもあります。
そんな一期一会に身を任せ、その都度何に興味を持って何を買ったとしても「ハズさないブランド」… それが私自身が「ニバダ・グレンヒェン」に抱いている印象です。
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増殖する〝ニバダ・グレンヒェン〟

興味の対象としてそれほどでもないブランドさんであれば、自分の興味の埒外にあるモデルを無視して、ラブなモデルが出る瞬間に「一本釣り」を仕掛ければ良いでしょう。しかし「ニバダ・グレンヒェン」のようなブランドには通用しません。本音では「もうこれ以上オレの物欲を刺激しないで下さい!!」と言いたいくらいです。
そもそも「1ブランドにつき、5本がマックス」と決めて、CELIEU(セリュー)さんの「ペリカン ウォッチケース(5本入り)」を4つ揃えましたので、6本所有のニバダはむしろ整理しないといけないブランドの一つでした。ただ、どれもこれもそれぞれに思い出が深く、未だに購入時の記憶が鮮明に蘇る中で「整理する」と言ったところで、実行に移すのは困難です。
それでも「どれか一本は奉公に出す」と決めていたわけですが… 年末年始の短い期間中に新しい「2本のニバダ」が増えてしまいました。今回はその内の一本、ニバダ公式ですらその姿を見られない、特定のリテーラーだけに割り当てられた〝限定モデル〟のお話です。
無視できなかった「限定モデル」

「限定モデル」だからといって、節操なく欲しくなるわけではありませんし、私なんかはむしろ、基準モデルに対して熱いパトスを感じる方だったりします。原点だけが持つ絶対的な存在感ってやつがありますからね。
それでも中には「無視できない限定品」もあります。特に何らかのコラボレーションで生まれた時計に生じるケミストリー…「垣根を越えた事実の重さ」ってやつが厄介です。単なる「限定ダイヤルでございますわよ!!」的な限定とは異なる、複雑なストーリーの成果を確かめたくて仕方がなくなるのです。
ってなわけで、日本国内にたった2本だけ入荷したうちの一本、オートクロン コレクションのメカクオーツ版、「Autochron Panda Santurce Collection(オートクロン パンダ サントゥルセ コレクション)」を購入しました。

ほとんどの方にとって「サントゥルセ コレクション ってなんやねん??」だと思います。これはニバダの著名なウォッチコレクターとして知られるホセ・サラス氏(プエルトリコ)が、自身が主催するコミュニティー「サントゥルセ コミュニティ」のスペシャルモデルとしてデザインしたもので、本来はその枠の中で楽しまれるモデルです(ニバダ公式にすら載っていませんからね)
それが何故か日本に2本(ダジャレではありませんよ)入ってきたわけです。
※「Santurce Collection」は独自のコレクションを展開するマイクロブランドの名でもあります。何気にジワる時計を作ってました(笑)
ニバダ大好き!! ウォッチコレクター コミュニティー の夢が詰まった「オートクロン(Autochron)パンダ」

こういうファン主体のリミテッドモデルは決して珍しい物ではありません。しかし、単なる名義貸しではなく、最初から最後までファン主導でデザインされた時計がどのくらいの割合で存在するかについては、些か疑問符が付きます。
今回のリミテッドモデルで大きな役割を果たした、サントゥルセ コミュニティのサラス氏の場合、自身がデザインのフィニッシュワークまで熟したとの情報があります。ブランドからも一目置かれるコレクターさんが、自分たちの理想を叩き込んで完成した「オートクロン パンダ サントゥルセ コレクション」…
我々消費者側が日頃胸に秘めた想いを代弁してくれた〝特別なオートクロンの誕生〟。すみません、もはや何を書いても言い訳にしかなりません。はい、見事にぶっ刺ささりました(笑)
見どころしかない!!「オートクロン パンダ サントゥルセ コレクション」の全てを裸にしてやるぜ!!

今まさに「オートクロン パンダ サントゥルセ コレクション」を左腕に着けて、それをチラチラ鑑賞しながらこの原稿を書いているわけですが、一瞥しただけでも「語れる文脈」が泉のように湧いてきます。ちょっとコレ、とんでもない時計かもしれません。
と、そんな書きたい衝動を一旦抑え付けて、まずは当時、僅か20本程しか作られなかった「オートクロンのオリジナルモデル」についてお話しなければなりません。
デイトナの「エキゾチック ダイヤル」に似た意匠にはワケがある

サブダイヤルには四角いロリポップ。1960年代後半から1970年代中盤にかけて製造されたとされる「エキゾチック ダイヤル(ポールニューマン ダイヤル)」は、ロレックスが「SINGER(シンガー社)」に発注したものとして知られています。当時、あまり売れ行きが良くなかったデイトナのテコ入れとして作られたものだそうです。今となっては信じられませんが…
そして「オートクロン」ですが… エキゾチックでしょ?? めっちゃニューマンでしょ?? で、思うわけじゃないですか??「ま~た、似せよってからに」と。
おっと旦那衆、早まっちゃいけませんぜ!! この「オリジナル オートクロン」のダイヤルは、なんと!! ポールニューマン デイトナのダイヤルを作った「シンガー社作」なのですよ。
これはもう〝義兄弟〟と呼んでも良いくらいの因果ではないでしょうか??
そうして、Valjoux Cal.7765 を搭載していた当時のモデルを元に、極めて忠実に復刻された現代版が、今回ご紹介する「新生オートクロン」です。
雰囲気たっぷりの「パンダ ダイヤル」

オリジナルモデルのダイヤルから話し始めましたので、新作「オートクロン パンダ サントゥルセ コレクション」に関しても〝ダイヤル〟から見ていきましょう。
そもそもニバダ・グレンヒェンは、ヴィンテージの現代語訳が異様に上手なブランドです。私が一番最初に購入したニバダである「クロノマスター アビエーター シーダイバー」もそうでした。古くささに一味加えることで、単なる懐古趣味に留まらない「ニュービンテージ」を確立していたのです。

そんなニバダの妙技は「オートクロン パンダ サントゥルセ コレクション」においても遺憾なく発揮されています。
あくまでしれっと作った感を出しているのも、それが一番〝リアル〟であるというニバダ・グレンヒェンからのメッセージでしょう。この辺の塩梅がとにかく上手いですねぇ。
「シルバーホワイトのダイヤル」に、敢えて「白い蓄光のカタマリ」

柔らかなシボが感じられる「ダイヤル」は、シルバーホワイトの輝きも相まって非常に上品な仕上がりです。
そこに敢えてコントラストを無視した「白い蓄光のインデックス」を配置しています。思うに、この意図は〝2つ〟あると思います。
一つは「ポールニューマン デイトナ」の〝全く目立たないインデックス〟を意識したであろうこと。もう一つは〝黒いサブダイヤルのレイアウト〟を邪魔したくなかったであろうこと。
どちらも、エキゾチックなデザインの魅力を最大限に味わうための配慮に違いありません。結果として、ハイセンスな印象を与えるダイヤルになっています。
引っ込み思案の「タキメーター」

見づれぇ(笑)
敢えてそんな奥まったところに置かなくてもとは思いますが、白いダイヤルを〝キュッと引き締める役割〟を担っています。ベゼルに施されたものと比較すれば、明らかに見づらいタキメーターです。しかしながら実用性がないわけではありませんので、所謂「レーシングクロノグラフの面目」は保たれている… ことにしておきましょう。
時代感を守るようにデザインされた「針」

時針・分針は「バーハンド」、蓄光塗料もたっぷりと塗られています。ダイヤルに要素が満載されているので、これくらいの素っ気なさが丁度良い感じ。
秒針は根本が太く先端部が細い〝長三角形タイプ〟。視認性が良く、私が一番好きなデザインです。オリジナルモデルの意匠を忠実に守ったところにも好感が持てますね。
随所に魅力が散りばめられた「ケース」

何せ「ケース」ですよ。仕上げの良さに印象を持っていかれがちですが、形そのものがかなり個性的です。ドスンと重量感のあるアウトラインですが、決してラフで乱暴な印象ではありません。流麗なカーブで構成されているため、むしろ上品さを感じるでしょう。
そして悪天候でも心強い、皆んな笑顔の「20気圧」です。
随所に散りばめられたチャームポイントが多過ぎて、解釈が追いつかない「ケース」です。取り敢えず周辺パーツについて語りながら、オートクロンの「ケースの魅力」を解きほぐして参ります。
やたらと過保護に守られた「ベゼル」

男らしいタッチの「カウントアップ ベゼル」です。太からず細からず、丁度良い存在感だと思います。ヴィンテージの王道的バランスですよね。
注目すべきはこのベゼル、ケースに埋まっているのですよ。しかも極々自然に、さも当然のように。
これは何とも愉快。こんなにも過保護に守られたベゼルは見たことがありません。
アウター回転式のベゼルというヤツをデザインの文脈で見ますと、言葉は悪いですが「後付け要素」なのですよ。ショートケーキにちょこんと乗ったイチゴやミントの葉と同じ。だからこそ、ベゼルが吹っ飛んでしまった後でも、ダイバーズの格好良さは毀損されません(映画・『地獄の黙示録』を参照のこと)

「オートクロンのベゼル」はデザイン的にもケースと一体の立場にあります。〝ベゼルを含めてケース〟なので、ベゼルが失われると間の抜けた印象になってしまいそうです。
しかしながらこの一体感は、外付け回転ベゼルを搭載した時計では中々お目に掛かれない類いのものです。視覚的重心の強さ、カタマリとしてのキャラクター性…「オートクロンのデザイン」における最大の功労者は、この「ベゼル」かもしれません。
体育会系の「ブレスレット」が意外とジェントルマン

ケースの幅から伸びて、強烈なテーパードで細く絞られる「ブレスレット」。表面はサテン仕上げ、見るからに体育会系な作りですが、装着して手首を回転させるとアラ不思議。柔らかで上品な光の反射が次々に起きて、キラキラととても美しいのです。

参りましたね。こんなに美しくて存在感があると、ストラップに換装するきっかけがありません。HºM’S” 表参道店の店長も「まずはブレスを楽しんで下さい」と仰ってましたし、しばらくの間は「ブレスレット スタイル」で使うことにします。

高級ブランドでもあまり見られないレベルでガッチリ填まる「エンドピース」に震えた

これをお見せしたかった!! どうですか?? 隙間なくビチビチに填まったこの「エンドピース」の迫力は。ロレックスや昔のブライトリングを彷彿とさせるものがあります。高級ブランドの時計でも、ここが疎かなモデルは幾らでも存在しますからね (;´∀`)
ケースとブレスレットを繋ぐキーパーツとして、この「エンドピースは完璧」です。素晴らしい加工精度、見事な仕上げ。それでいてこれみよがしでもなく、当たり前のようにケースと繋がっています。
「エンドピース」が良いブレスレットって、後々まで記憶に残るんですよねぇ。
そして輝く「装着感ッ!!」

こんなに太くて、当然重たいブレスレットですよ。ところが着けるとやたら馴染むし、あまり重さを感じませんでした。くたびれた中年(老年?)の私でもそうなのですから、多くの方の袖口で輝いてくれるはずです。

恐らく、エンドピースからブレスレットのひとコマ目が落ちる、その位置が良いのだと思います。肌への接地面が広いため「クルクル回ったりする」こともありません。時計本体(ヘッド)とブレスレットの〝重量バランスが取れている〟からでしょうね。
程よい丸みを持つ「風防」

ガツンと来る全体像に僅かな愛らしさを残しているのが「風防」です。ダブルドーム型サファイアクリスタルを採用することで、20気圧の防水性を支えつつ、シルエットに丸みをもたらしています。
ムーブメントはオレたちの「VK」

ビバ「VK」!! オートクロンの心臓部に積まれているのはSEIKO製「VK67 メカクォーツ」です。月差は ±20秒以内。電池寿命は約3年。
クロノグラフ、スモールセコンド、12時間計、60分計に日付表示機能があります。腕時計喫茶に出現することの多い「VK64」もベースムーブメントは同じです。
流行のバイコンパックスを手頃な価格で実現する手段として、VK64の人気は留まるところを知りませんが、現在の流行を指標にした場合のVK67は、レイアウト的にいかにも古臭く、話題作での採用例も多くはありません。
だからこそでしょうね。「オートクロン」を見て最初にハッとするのも、この近年あまり見掛けなくなった「縦三つ目カウンター」によるものです。一周回って「クール」に見えませんか??
2点だけ、メカクォーツ版オートクロンの〝惜しいところ〟
こちらを見て下さい。ETA Valjoux7750 を搭載した「機械式のオートクロン」です。お値段が全然違いますので、私には買えませんでした(泣)
気付いていただけましたでしょうか?? サブダイヤルが一個少ないですよね??そうなんです。6時位置にダイヤルがありません。
そしてこのアンバランスが「機械式オートクロン」を特別なものにしています。天地が曖昧なデザインは好き嫌いが分かれるところですが、このモデルの魅力はこの「アンバランス」にこそあります。
一方の「メカクォーツ版オートクロン」は〝縦三つ目カウンター〟。これはこれで旧時代を彷彿とさせるエモさがありますが、「オリジナル オートクロン」がカウンター2つである以上、VK67のカウンターを一つ潰してでも、オリジナルに寄せた方が良かった気もします。

その考え方で言えば矛盾がありますが、オリジナルにあったとはいえ「デイトは要らなかった」のではないでしょうか?? デザインのバランスがおかしくなる?? いやいや、普通にインデックスを伸ばせば全然気になりません。
逆に「機械式オートクロン」の〝縦三つ目〟はアリかもしれません。それでもデイトは要らないかなぁ~
メカクォーツ版はかなり〝お得〟です

聞いたところによりますと、機械式とメカクォーツの「オートクロンの外装」は、細かい仕上げにおいても何ら差が無いそうです。倍以上の価格差があるはずですが… 全く同じなんだとか。
ムーブメントが違うとはいえ、価格の差を考えたら他に何らかの差異があっても誰も文句は言いません。むしろメカクォーツ版オーナーとしては「有り難い話やけど… ええのん??」みたいな申し訳ない気持ちすら湧いてきます。
要するに「メカクォーツ版オートクロンはお得」なのです。賢い主婦はメカクォーツ!!(笑)
関西の方に薦めたい!!(笑)

以前、HºM’S” さんが行った大阪ポップアップの土産話の中に「大阪ではニバダ・グレンヒェンの人気が凄かった」がありました。これね、私も淀川の水を飲んで育った関西人なのでよく解るんです。関西人が好きな要素って言いますか、関西人の琴線に触れる〝何か〟がニバダにはあります。
明確に「ここが!!」と言えないもどかしさはありますが、程よい押し出しの強さが刺さるのかもしれません。色遣いに〝猛虎魂〟を感じるモデルもあります(笑)
実際に帰省の際に着けていったところ、大阪の街の風景にもやたらと馴染む気がしました。露天でホッピー片手にたこ焼きを頬張りながら友人と過ごす楽しいひととき、その傍らで時を刻む左腕の「ニバダ・グレンヒェン」… 良いでしょ?? 関西の方にお薦めしたいと思います。
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最後に… このオリジナリティーだけでも「オートクロン」は購入する価値がある

「機械式かメカクォーツか」に関しては、単純に「お財布と相談」した結果で購入して損のない「オートクロン」だと思います。前述の通り、見た目の部分で「安いメカクォーツが劣る」わけでもありませんしね。
私自身の動機で言えば、オートクロンの〝見た目〟が欲しかったというのもあっての「メカクォーツ選択」でした。ついでに申し上げると、そろそろ〝縦三つ目のクロノグラフが流行りそうだから〟という、些か軽薄な理由もありました(笑)
どちらを選んだとしても、面白さを存分に味わうことができる「オートクロン」だと思います。ケースに埋没する「ベゼル」、流行からズレた(先取りの??)VK67「縦三つ目仕様」… ケース幅で伸びるど迫力の「ブレスレット」にも強い印象を受けました。
これら卓越した〝オリジナリティー〟が「オートクロン」の最大の魅力であることは疑いようがありません。さぁそこな貴方も、ビタビタに決まったエンドピースやニューマンなダイヤル、何とも見づらいタキメータースケールに悶絶したりしませんか?? (*´∀`*)
| Autochron Panda Santurce Collection Specifications | |
|---|---|
| ケース高さ | 44.3mm |
| ケース幅 | 38mm |
| ケース厚み | 10.8mm |
| ベルト幅 | 20mm |
| ケース素材 | 316L ステンレススチール |
| ベルト素材 | 316L ステンレススチール |
| 風防 | ダブルドームサファイアガラス |
| 防水 | 20ATM |
| ムーブメント | TMI/SEIKO VK67 メカクォーツ(クォーツ) |
| 機能 | デイト、クロノグラフ |
| 付属品 | Nivada Grenchen純正BOX、保証書 |
| 保証 | 2年保証(ムーブメント部のみ) |









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