『Baltic』フランスの洒脱が詰まった〝ネオ・クラシック〟

キングセイコー VANAC(バナック)の〝レザーストラップモデル追加〟は「事件」である

 1972年に初登場した「KING SEIKO VANAC(バナック)」。昨年の春、新解釈版として華麗に復活したキングセイコー バナックについて書かせていただいた〝些か熱量過多の記事〟は、バナック自身の注目度の高さに引き上げられるかのように、多くの読者の方々の目に触れたスマッシュヒット作になりました。この場を借りて改めてお礼申し上げます。

※まだお読みでない方は是非♪

 実際、こうして読み返すと展開も筆致も〝クドい〟のなんの。個人的に「次はバナック辺りの復刻があるんじゃないか??」と予想していたのもありましたが、その力作っぷりに嬉しくなっての熱の入りようだったと思います。いやほんと。良い時計ですよ~ バナックは… (*´ω`*)

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そんな「VANAC(バナック)」に〝レザーストラップモデル〟が追加されたぞ!!

King Seiko Vanac(キングセイコー バナック) ストラップ モデル
SDKV013 & SDKV015 出典:https://www.seikowatches.com/

 最初に申しておきますが、いつもなら「レザーストラップ」が追加された程度で騒いだりはしません。「ああ、そうですか」くらいのものです。ところが「バナック」に追加された〝たった2本のストラップモデル〟… ダメだ。アレはダメだ。ブレスレットモデルが「若者の顔」だとすれば、ストラップモデルは「大人の顔」。それもがっつり本気でドレスアップした「社交界の女王」のようではないですか。

 ブレスレットモデルからは感じられなかった種類の色気が漂う、ストラップ版「キングセイコー バナック」

 今回はそんな「キングセイコー バナック」のストラップモデル追加が、なんやかんやで「大正解」である理由について、可能な限り端的にまとめて参ります。どうぞ最後までお付き合い下さい (*´∀`*)

自由奔放な「70年代デザイン」

Love & Peace in the 70s

 70年代オリジナルのギラギラした熱量はそのままに、現代的な洗練を施してリデザインされた「復刻版バナック」。予想の範疇を飛び越えて登場した〝攻めたデザインの新生バナック〟に、度肝を抜かれたセイコーファンの方も少なくないでしょう。

 そんな70年代のデザインには幾つかの〝顔〟がありますが、その中でもバナックのデザインは、ゼニスのリバイバルに代表されるカテゴリー、つまり「今使うには覚悟がいる」類いのデザインに属します。

 70年代デザインと言われてもピンとこないお若い方は、70年代にヒットした音楽を収めたLP、ロックやファンクのジャケットデザインをご覧いただければと思います。お洒落にまとめようなんて考えてもいない、とてもオープンな〝70年代の方向性〟を感じていただけるでしょう (*´ω`*)

70年代の流行が持つ「特殊性」

 デザイン史における〝徒花〟とも言える70年代デザインですが、その後の80年代、90年代とは〝広がり方の性質〟が異なります。80年代に流行ったトーキングヘッズばりの〝肩パッド〟にしたところで、皆が皆、乗っかっていたわけではありません。流行に敏感な若者たちが〝選択した結果の流行〟それが80年代、90年代に共通する性質です。

 翻って「70年代」。物心が付いた少年時代をサイケデリックな70年代で過ごしたワタクシが思いますに、70年代の流行は80年代などとは違い〝受取り手が選択した結果の流行ではなかった〟と思います。ぶっちゃけ他に選択肢も無い時代でしたから、今何が流行っているかなど関係なく、提供された風潮をそのまま受け入れるしかなかったのです。一本しか経路の存在しない長距離バスがあったとして、それしか移動手段がなければ、皆がそれに乗るしかないのと同じですね。

未知への熱望

 その反面、誰しもの心の中に「見たことのない何か」を希求する気持ちは強かったはずです。近代デザイン史を隅々まで見渡しても、70年代ほど自由で挑戦的な表現に挑むことが、商業的にも許された時代はありません。そういう意味では「新たな価値観を創造」し、後の時代を先駆するエネルギーに溢れていた70年代と言えるかもしれません。

 世界的にドラッグが蔓延した時代背景の影響はあったでしょう。しかし、自己の内面を臆面なく吐露することが許され、その後の時代で個人が尊重されるようになったのは、創造的でエキセントリックな70年代を生き抜いたからこそです。

 鬱屈した「個」の解放を表現したかのように、問いかけてくる挑戦的なデザインこそ「70年代デザインの真骨頂」です。「新生キングセイコー バナック」のデザインにも、そんな70年代の時代性、自由奔放な発想が溢れています。

解き放たれ、本来の魅力を解放した「キングセイコー バナック」

King Seiko Vanac(キングセイコー バナック) ストラップ モデル
SDKV015 出典:https://www.seikowatches.com/

 写真で初めて見た瞬間に深々と突き刺さったバナックの「ストラップモデル」。もちろんその前提には、セイコーという〝鉄板メーカー〟の作った挑戦的なモデルであるという特別な意味があったことは事実です。

 しかし、ブレスレットモデルからは感じることのなかった色気の数々に、単純な「ストラップモデルも作りました」ではない… 言うなれば「リボーン」に近い衝撃があったのです。何かから解き放たれたかのように、ここまで〝別物〟としての印象を受ける理由とは一体…

 まずは「ブレスレットを外したこと」〝意味〟を考えてみましょう (*´∀`*)

「ブレスレットに匹敵するレザー ストラップ」が発信する〝セイコーのメッセージ〟

King Seiko Vanac(キングセイコー バナック) ストラップ モデル ブレスレットモデル
SDKV015 & SDKV003 出典:https://www.seikowatches.com/

 「ブレスレットのバナック」なら実物を拝見したこともありますし、腕に巻かせていただいたこともあります。実際、かなりのものでした。

 正直、セイコーさんに対して〝ブレスレットが秀逸〟みたいなイメージはありませんでしたが、新たに設計された専用ブレスレットは角の当たりも柔らかく着け心地も良好で、仕上げも満足できる出来映えでした。レギュラーモデルの復刻版キングセイコーのブレスレットでも同じような印象を持ちましたが、近年のセイコーさんにおけるブレスレット開発のプライオリティーが「一段上がっている」のは間違いないと思います。

 そんなブレスレットを外しての「ストラップモデル 展開」です。ちなみにブレスレットモデルとストラップモデルの価格差は「1万1000円」。たったそれだけです。これを以て「ストラップのくせに高いな」とお感じになったとしても不思議はありません。そしてここが今回のラインアップ追加の「キモ」になります。

 つまり「ブレスレットのコストに匹敵するだけのストラップが付いている」ということです。価格設定を見れば、少なくともセイコーさんはストラップモデルを「ブレスレットモデルの廉価版」とは捉えていません。純粋な選択肢として「ブレスレットかストラップかをお選び下さい」… 差額を見る限り、それがセイコーさんからのメッセージだと思います (*´ω`*)

出来の良いブレスレットを「敢えて外したこと」で生まれた〝魅力の凝縮〟

King Seiko Vanac(キングセイコー バナック) ブレスレット モデル
SDKV003 出典:https://www.seikowatches.com/

 そんなブレスレットを外したことで生じた〝一番の変化〟「デザインのイデアがより明確になった」ことでしょう。正直、この変化には唖然としました。

 同素材のブレスレットは、バナックの宝飾的なレベルを「均整の取れた金属製の円環」として押し上げる役割を持っています。デザイン的に難しい解釈などしなくても、着ければその完成度だけで満たされた気持ちになれるでしょう。これも間違いなく「完成形」です。

 そして「ストラップモデル」です。異素材のストラップで円環としての連続性は一旦、断絶されました。私はこの〝断絶〟こそが今回の「英断」に違いないと思っています。

 同素材のブレスレットという〝盟友〟を失ったことで、バナックのケースはそれ単体での「独立」を余儀なくされました。その分、ストラップモデルで見る「バナックの顔」はより印象的で鮮烈なものになったのです。バナックが内包する70年代の空気感がより直線的に弾けるように放出される様子に、改めて「バナックって良い顔してるよなぁ」と頷くしかありませんでした。

 デザインには必ず「基点とする原初」があって、その後に付帯する要素は様々な事情から生まれた後付けに過ぎません。〝基点こそ最重要〟と考える私が、普段から〝限定限定言わない〟理由の一つです。

 高い完成度を認められたブレスレットであっても〝バナックのイデア〟をより凝縮させるために敢えて排除してみせる勇気…「安定を破壊する一瞬」に最も輝きを放つデザインの本質に向き合い、ギャンブルのような「英断」を下したセイコーさん。その成果がバナックに「ストラップモデル」という〝別種の魅力〟を生み出したのです (*´∀`*)

ストラップモデルで「際立つケースデザイン」

King Seiko Vanac(キングセイコー バナック) ストラップ モデル
SDKV013 出典:https://www.seikowatches.com/

 ストラップモデルとして「新生バナック」を見たことで、バナック本来のキレのあるデザイン性が浮かんでくるようになりました。大胆な直線構造を持つケース(41ミリ幅)の立体感が解りやすく際立ち、仕上げの細やかさにも自然と目が行くようになっていると思います。

 この辺りが、異素材である「皮革」と組み合わせることで生じた〝効用〟と言えるかも知れません。

より感じられるようになった「ダイヤルの素材感」

King Seiko Vanac(キングセイコー バナック) ストラップ モデル ダイヤル
SDKV013 出典:https://www.seikowatches.com/

 異素材と組み合わさることで印象の底上げが起きたのはケースだけではありません。ダイヤルの繊細な「カラーグラデーション」も同じ様に印象に残るようになりました。

 アワーマーカーのレイルウェイを縁取る金色のリング、スポーティーで大型の蓄光を備えたインデックス。重量感のある針やデイト枠の存在感に対しても、金属質部分が凝縮されたことで視野が集中し、自然と目が行くようになっています (*´∀`*)

ボリューミーなストラップが〝優しさと懐かしさをプラス〟

King Seiko Vanac(キングセイコー バナック) ストラップ モデル
SDKV013 出典:https://www.seikowatches.com/

 カーフレザーのストラップはケース形状を意識するかのように肉厚で、重量感のあるデザイン。牛革素材の自然なシボ感を活かした作りで、好き嫌いに関わらず長く使えそうなストラップです。ステンレスブレスレットの切れ味とは異なる〝優しさ〟と、すっと肌に馴染む〝懐かしさ〟がプラスされました。
 
 ストラップのカラーは「茶(SDKV013)」「黒(SDKV015)」。それぞれ対応するモデルに装着されています。

バナックのストラップモデル〝ダイヤルデザインは2種類〟

King Seiko Vanac(キングセイコー バナック) ストラップ モデル
SDKV013 & SDKV015 出典:https://www.seikowatches.com/

 今回のストラップモデルには「2種類のダイヤル」が用意されています。「SDKV013」「ブラウンのサンレイダイヤル」。各所に使用されたゴールドの差し色が映える、大人びたダイヤルです。ブルー系のスーツに似合いそうな予感 (*´ω`*)

 もう一つの「SDKV015」は70年代の流行を彷彿とさせる鮮やかな「グリーンのサンレイダイヤル」です。エネルギッシュな色の印象とは裏腹に、黒いストラップに相性の良い黒やグレーのスーツに合わせるとクールに決まるのではないでしょうか??

搭載するムーブメントは精度に優れた「Cal.8L45」

King Seiko Vanac(キングセイコー バナック) Cal.8L45 ムーブメント
Cal.8L45 出典:https://www.seikowatches.com/

 搭載する新型ムーブメント、2万8800振動/時の「Cal.8L45」は、セイコーの中位価格帯で使用されるムーブメントとしてはかなり高精度な部類の「日差 +10 ~ -5秒」を達成しています。パワーリザーブも72時間と今風ですし、気に入って毎日使う時計に搭載するにはうってつけの「ちょっと贅沢な心臓部」です。

雨の日も安心の「10気圧防水」

 毎日使う予定のない時計の購入であっても、性能指標としての「毎日気兼ねなく使えるか」は大切です。特に、天候不順の日に使用を躊躇しなければならないような防水性能しか持ち合わせていない時計の購入には戸惑いを感じて当然。時計を良くご存じの方ほど、その辺りには注意を払っていると思います。

 「キングセイコー バナック」の防水性は「10気圧」。レザーストラップモデルなら「絶対にストラップを濡らしたくない」と仰る方もいらっしゃるでしょうが、時計本体にはほとんどの悪天候でも使えるスペックがあります。但し、水没には気を付けましょう (;´∀`)

ブレスレットモデルで完成していたはずの「バナック」。だからこその「事件」

 前述の通り、ストラップのモデルが新たに追加されたくらいで、ギャーギャー騒ぐ話ではありません。今回、「キングセイコー バナック」に追加された2つの「ストラップモデル」〝事件〟なのは、ほとんど「リビルド」と申しても構わないほどの変化が、そこにあったからです。

 「こんなにも印象が変わるのか」… 見慣れたパートナーが見慣れない服を着て現れたとき、ハッとして息をのんだ経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。当事者にとってそれは、長く記憶に留め置くに相応しいだけの価値を持つ「大事件」に違いありません。

 今回の「ストラップモデル」はそれにあたります。見慣れたクールビューティーが見せてくれた「妖艶な装い」… バナックの潜在的な魅力を掘り起こし、新たな一面として我々に示すことができたのは、偏にモデルのコンセプトをブラさずに誕生した「カーフストラップ」と、それを企図して設計されたであろう「新生 キングセイコー バナック」〝懐の深さ〟ゆえ。この2つが融合したからこその「奇跡」なのです (*´ω`*)

プライマリーとセカンダリーが逆転したかもしれません

 先んじて発表されたブレスレットモデルから派生した「ストラップモデル」ですが、その印象の強さで先輩を追い抜いてしまったかもしれません。

 どちらを起点に考えても「バナック」という存在が変化することはありませんが、「どういったシーンで着けたいか」といった〝購入の動機〟に変化が生じる可能性があります。つまり、これまでさして興味を示さなかった消費者が「キングセイコー バナックの魅力」に気付くかもしれないのです。

 すでにあまりに大きな印象の変化に「ただの追加ではない」と評価を改めるしかなかった「バナックのストラップモデル」ですが、購入の動機として「ストラップモデルだから購入したい」と考える人の方が増えれば、それはバナックのラインナップにおけるパラダイムシフト「主と従の逆転」です。

 百戦錬磨のセイコーさんですし、優秀なスタッフも多数揃っていることでしょう。とすれば、私が考えているようなことも疾うに織り込み済みで、満を持しての「ストラップモデル 投入」だったのかもしれませんね。セイコーさん、おヌシも策士よのぉ~ (*´艸`*)

最後に… キングセイコー バナックの「ストラップモデル追加」で起こるであろう「ブレスレットモデル」への〝再注目〟にも期待大!!

King Seiko Vanac(キングセイコー バナック) ストラップ モデル ブレスレット モデル
SDKV015 & SDKV003 出典:https://www.seikowatches.com/

 何年もかけて開発した腕時計であっても、注目される期間は1年が良いところです。ところが、ラインナップに新色ダイヤルが追加されたり、ケースサイズのバリエーションが増えたりすると、「オリジナルモデルへの注目」もにわかに再燃します。

 思うに、ブレスレットモデルという〝完成形バナック〟の鮮度に翳りが見える前に何らかの手を打つこと自体は、セイコーさんの中で早々に決まっていたのでしょう。

 そうして投入された「ストラップモデル」と、先行したブレスレットモデルを合わせた〝ツートラック体制〟でより多様なニーズに対応しつつ、トラック間で生じる注目度の変化に応じて「次のカンフル剤は何にするか??」を決定していくのだと思います。

 同時に、ストラップモデルの追加が起こすであろう「ブレスレットモデルへの再注目」にも期待したいところです。ストラップモデルが注目される中でも「それでもブレスレットで欲しい!!」と考える層は必ず存在しますからね。

 シーソーのように変化する消費ニーズを次の開発の道標として活かす… 「キングセイコー バナック」には「展開次第で今以上の存在感になる可能性」があります。

 70年代テイストがその〝奇抜さ〟だけで注目される存在から、純粋なデザイン性の高さで評価されるようになったとき、「新生キングセイコー バナック」はその代表的な牽引役として、腕時計の歴史に刻まれることになるでしょう (*´∀`*)

※まだお読みでない方は是非♪

項目内容
キャリバーNo8L45
駆動方式メカニカル 自動巻(手巻つき)
精度日差+10秒〜−5秒
駆動期間最大巻上時約72時間持続
石数35石
振動数28,800振動/時(8振動/秒)
機能秒針停止機能/カレンダー(日付)機能つき
ケース材質ステンレス(裏ぶた:ステンレス+サファイアガラス)
ケース厚14.3mm
ケース横41.0mm
ケース縦45.1mm
ガラス材質ボックス型サファイア
ガラスコーティング内面無反射コーティング
ルミブライトあり(針・インデックス)
バンド材質牛皮革
中留ワンプッシュ三つ折れ方式
腕周り長さ(最長)195.0mm
防水日常生活用強化防水(10気圧)
耐磁あり
重さ103.0g
その他特徴ねじロック式りゅうず/シースルー・スクリューバック

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